【歌い手】捨てられない想い３（そらる）

九十八曲 ページ8

私はきっと傲慢だ



だって誰かじゃない、みんなに認められたかったんだから




でもそれは自らの足元を暗くしていった




それをきっとあの人達は知っていたんだろうな
つけ込まれても当然だったと今になって思う





それでも歌を歌えばわかってくれるだろうと勝手な理想論を繰り返した




でもそれはただの理想論に過ぎなくて



だから歩く事が怖くなった
自業自得だと自分を責めて楽になりたかった



そして逃げた



こんな私なんて放っておかれて当たり前なのに



みんな、私を必要だと言ってくれた
まだ必要だとすがってくれた




だから
期待に応えたかった



私はとても恵まれていたんだ






そらる「歌、もう出来てる？」




『はい。実は昨日に出来ていて』




そらる「聞かせてくれない？」




『もちろんです。感想を聞かせてください』




私は歌い手を辞めて良かったと最近になって思うようになった




それはきっとそらるさんのお陰で



『そらるさん』



イヤフォンで歌を聴いているので私の声は聞こえない




だからどうしても伝えてみたかった





『………好きです。』





もう思い残すことはなかったから




でもそらるさんは私の方を見ない




それほど歌に集中しているんだろう



いつ話そうか



いつ



付き合ってくださいと伝えようか

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