お腹 ページ7
「司咲ちゃんがあまりにも純粋だから、からかいたくなっちゃった。ごめんね」
温泉で、髪を結い上げているから司咲以外にはよく見えるその跡を瑞稀と朱音は微笑ましげに見つめた。
「つばさくんとうまくやっているみたいね。なんだか、お姉さん嬉しいわ」
「…はい。おかげさまで」
「ちゃんと愛し合っているみたいだし」
ツン、と朱音は司咲の鎖骨を軽く突いた。
「結婚するまで妊娠しないようにね。何かあった時、傷つくのは女だからね」
「……そうですね。そうします」
「……ところでさ、司咲ちゃん。お腹触ってもいい?」
「なんでですか⁉︎」
じり、と距離を詰められて司咲は嫌な予感がして逃げようとするが、腕を掴まれた。
「だって、めっちゃ細いじゃない。羨ましい」
「ちょっとだけ!」
「嫌ですよ!私はもう少し肉つけたいのに…」
「…確かに、もう少し肉つけたほうが抱き心地いいよね」
朱音に右から抱きつかれ、瑞稀に左から抱きつかれてお腹を触られた。
「もう少し肉つけたら、丁度いいかもね」
「は、離してください…」
もぞもぞと抵抗を試みるが、2人の腕からは逃れられそうになかった。先輩相手に本気で突き飛ばすことはできなかった。結局、腹だけではなくいろんなところを触られた。先輩が変態だと後輩は大変だと、思った。
お風呂から上がると、浴衣を身につけて脱衣所を後にした。青い朝顔模様の浴衣が少しだけ気に入っていた。浴衣なんて、普段は着ないから新鮮だった。
部屋までの道中、ばったり奨悟と会った。挨拶をすると、短く返された。ただ、顔は背けられていた。
「…奨悟さん?」
「お願い、近寄らないで」
後ろを向く奨悟は頬を赤く染めていた。風呂上がりの司咲は刺激が強くて、直視できなかった。
「僕は、司咲ちゃんにフラれたけど、まだ諦められたわけじゃなくて…。まだ司咲ちゃんが好き。今からでもこっち向かないかなって思っちゃうの。…だから、今はそっとしておいて。お願い」
「分かった。…ごめんなさい」
奨悟に背を向けた司咲は瑞稀と朱音と歩き出した。不意に手を取られて司咲は驚いた。
「これ、間違えて買っちゃって困ってたから、貰って」
受け取ったのはミルクティーだった。司咲の好きな甘いもの。
「…ありがとう」
「……未練がましくてごめんね」
司咲は奨悟と別れてホテルの部屋に戻った。
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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年6月5日 21時