温泉 ページ6
初日は移動だけ。瑞稀と朱音と3人で一部屋を使い、他のキャストはそれぞれ1人部屋の人もいれば、2人部屋の人もいた。平気だと思っていたのに、ふとした拍子に寂しくなってしまっていた。
「司咲ちゃん、つばさくんに会えなくて寂しいでしょう?」
「……え、そんな…。まだ1日も経っていないですよ?」
荷物からお風呂セットを取り出す司咲に朱音が聞いた。動揺する司咲を見て、朱音と瑞稀が笑った。
「私も、もう彼氏に会いたいわ」
「…え、瑞稀先輩いつの間に彼氏できたんですか⁉︎」
前は彼氏はいないと言っていた瑞稀に目を見開いた。
「あれ、言ってなかったっけ?」
「聞いてないです!」
「瑞稀、私も聞いてない」
2対の視線に見られて、瑞稀はスマホを操作した。
「実は、いろいろあって。紆余曲折して、2週間くらい前から大平峻也とお付き合いさせていただいているの」
「今日イチの衝撃。瑞稀、荒木さんみたいな大人っぽい人が好きだと思っていたから」
「荒木さんは、恋というより憧れだもの」
「いいなぁ。私も彼氏ほしい!」
司咲は瑞稀と顔を合わせて微笑んだ。
「お風呂、楽しみね。温泉なのよね」
「ですね!」
「早く行きましょう。時間がなくなるわ」
3人、一緒に温泉へと向かった。温泉は他のスタッフさんもいて、賑わっていた。
「司咲ちゃん」
体を洗ってお湯に浸かっていると、不意に鎖骨の辺りを指差された。
「それ…。つばさくん、意外と独占欲強め?」
「え?まあ、独占欲は強いと思いますけど…」
「ふぅん」
「ここ、赤い跡がついているよ」
「えっ?」
朱音の指が触れた場所を、司咲は反射で隠してしまった。
「それは昨日のやつ?」
「しばらく会えなくなるもんね」
ニヤニヤとこちらを見る2人の先輩に、司咲は顔を真っ赤に染めた。
「き、昨日は!何も…」
していない、だなんて言えなくてまた顔に熱が集まった。
しばらく会えないからと、司咲はつばさにちゃんと抱かれた。彼の腕の中は優しくて、温かくて好きだった。
昨日のことを思い出してしまって、司咲は心の中でつばさくんのバカ、なんていない人を責めてみた。
「ふぅん?顔真っ赤だけど?」
「み、瑞稀先輩だってそういうことしてるでしょう⁉︎」
「うん」
勢いに任せて瑞稀に話を振るが、あっさりと肯定されて、司咲は顔を覆った。
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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年6月5日 21時