寂しい ページ5
ゆっくり身を起こした司咲はつばさの寂しそうな背中を追いかけて、目の前でドアを閉められた。怒っている、というよりはきっと拗ねているのだと思う。つばさは、司咲のことが大好きだから、『大丈夫』と言われてショックだったのかもしれない。寂しいと、言ってほしかったのかもしれない。
「つばさくん」
ドアを開くと、つばさはソファに座っていた。その背中が頼りなさそうに、小さくなっていた。近付くと、一瞬だけ目が合って、すぐに逸らされた。
「つばさくん」
司咲はつばさの両頬を包むと、そっとキスをした。結婚を約束した、大好きな人の笑顔が見たかった。唇を離すと、ソファに押し倒された。
「…司咲のバカ」
呟くようにそう言われた。司咲を見るつばさの瞳がどこまでも優しかった。腕を伸ばすと、優しく抱きしめられた。
「俺はこんなに司咲のことが好きなのに…。少しだって長く一緒にいたいのに。俺と離れても平気なの?俺のこと、本当に好きでいてくれてるの?」
司咲はつばさの背中を優しく撫でた。
「ごめんなさい」
「どうして謝るの?」
バッと体を離されて、見下ろされた。瞳が揺れていて、泣き出しそうだった。
「…結婚してって言ってくれたのに、俺のことそんなに好きじゃないってこと?嫌だよ。別れないからね!司咲は俺の…」
涙が司咲の頬に落ちてきた。
「違う!」
体を起こそうとすると、肩を押さえられて身動きが取れなくなった。唇を奪われて、言葉も飲み込まれてしまった。舌が口の中を荒らしていく。荒々しいキスはつばさの悲しみを表していた。
「…君は、俺のこと大っ嫌いだったもんね。そんな君が俺のこと好きになんてならないか…」
「そんなこと!私はつばさくんのことが…」
「じゃあ、どうして平気だって言うの!」
「離れていたって、つばさくんは私の心に寄り添ってくれるでしょ?だから…」
「それでも俺は寂しいよ…」
ぎゅっと抱きしめられて、司咲は彼の背中を撫でた。
「ごめんね。重いよね…」
「それでも、私はつばさくんが好き。つばさくんだから結婚したいの」
唇に優しくキスをされて、司咲はつばさの背中を抱きしめた。
「ほんと、好き」
つばさは司咲の体を起こすと、抱きしめた。司咲の腕が背中に回ってきて、つばさは嬉しくて髪を撫でた。
「帰って来たら指輪見に行こうね」
頷いた司咲の唇にキスをした。
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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年6月5日 21時