トラブル ページ3
新しい肉を焼きながら、何故先輩の恋愛相談をフラれた傷の癒えぬ奨悟が聞いているのかと、謎だった。
「…どこに惚れたんですか」
なんとなく、聞けと言われているような気がして、仕方なく問いかけると、笑顔が向けられた。
「笑顔がかわいいところ、素直でまっすぐなところ、真面目で努力家なところ、たまに天然なところ…」
「も、もういいです!…その、なんでしたっけ?名前…」
「りなちゃん」
「そう、その子のことめっちゃ好きなのは分かりました」
「司咲ちゃんの妹なんだよね」
「……そうですか。…えっ。司咲ちゃんの妹のりなちゃんって…」
「知ってるの?」
「会ったことはありません。…ただ、最近トラブルがあったものですから…」
「トラブル?」
首を傾げる博喜に奨悟は先日の、司咲からの電話を思い出した。奨悟の気持ちを考えると連絡はしない方がいいと分かっていたが、巻き込んでしまった手前何が起こっていたのか真相を伝える義務があると思ったから電話した、と申し訳なさそうな声で司咲は真相を語った。ストーカー事件の電話を思い出しながら、りなにも関係することだからと奨悟は博喜に一連の出来事を聞かせた。
犯人はりなに強く執着していたのだそう。しつこくつきまとっていて、かなり迷惑していたりなは家族に相談して、一時的に基裕の実家に逃げていたらしい。そして、ほとぼりが冷めた頃に家族の元に戻った。
まるっきり姿を見かけなくなったりなを探しているうちに犯人は、偶然司咲を見かけりなだと勘違いしたのだそう。そして、司咲へのストーカー行為がはじまった。
「司咲ちゃんは?無事?」
「無事ですよ。つばささんが守りましたから」
「なら、良かった」
博喜はホッと胸を撫で下ろした。大切な友人である司咲と特別な人であるりなが無事ならそれだけでいいのだ。
「ねえ、もう出会って3ヶ月は経つんだけど。そろそろデートに誘ってもいい頃だと思う?」
「彼女が嫌じゃなければいいんじゃないですか?」
適当に返事をして、奨悟は笑った。いつの間にか悲しみは呆れに変わり、笑顔になった。きっと、これが博喜なりの優しさで、慰め方なのだと思う。
「博喜さん、ありがとうございます」
素直に礼を言って、奨悟は頭を下げた。
「でも、フラれたばかりの人に惚気話はどうかと思います」
そう言うと博喜はそうだね、と笑った。
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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年6月5日 21時