サプライズ ページ13
約1ヶ月半の大阪遠征が終わり、司咲は東京へ帰ってきた。2日後にはつばさが大阪へ行く。つばさの1日オフと司咲の休日が被ったので、2人で一緒に指輪を見に行った。つばさの職業柄、落ち着ける日はなかなかないから行ける時に少しずつ準備を進めることにした。婚約指輪は、司咲が大阪へ行っている間に用意してくれていて、左の薬指に光っていた。
「司咲、手貸して」
「うん?」
左手を差し出されたので、右手を出すと優しく握られた。選んだ結婚指輪に名前を彫ってもらうことにして、店を出た。完成までに大体3ヶ月程度かかるらしい。
「つばさくん。バレたらどうするの?」
「大丈夫だよ。帽子とメガネしてるし、今すごく手を繋ぎたい。……ダメ?」
「ダメじゃないけど…。恥ずかしい」
そう言いながら、司咲はつばさの手をぎゅっと握り返した。
「かわいい」
つばさは司咲の手を引いた。太陽が照りつけていて、8月頭の気温は立っているだけで汗が出てくる。なのに、繋いだ手は離さなかった。
「つばさくん、喉乾いた。甘いもの食べたい」
「そうだね。どこか入ろうか」
「うん」
「司咲。この後行きたいところある?もしなかったら連れて行きたいところあるんだけど」
「どこ?」
「それは秘密」
じっと見上げられて、つばさは微笑んだ。場所は教えてはくれないらしく、司咲は前を向いた。
「いいよ。連れて行って」
「嬉しい」
「サプライズ好きよね」
「うん。司咲の驚く顔と嬉しそうな顔が同時に見られるからね」
「別に、そんな顔してないわよ」
「照れてる?」
「照れてない」
「かーわい」
そっぽを向く司咲の頬が赤く染まっていて、つばさは優しく微笑んだ。近くの喫茶店に入ると、2人は向かい合って座った。飲み物を注文して、つばさはテーブルの上でそっと司咲の手を取った。
「司咲は俺の妻になるわけだけど、後悔してない?」
「してないわよ」
「それならいいけど」
手の甲を親指で撫でて、つばさは司咲の手の甲にキスをした。それだけで顔を真っ赤に染め上げる司咲に、つばさは愛おしさを抑えられなかった。司咲の細い指先に口付けると、びくりと手が震えた。恥ずかしがる彼女がかわいくて、つばさは優しく手を握った。
「つばさくんの、バカ」
ふいとそっぽを向く司咲がかわいくてつばさは笑みを深めた。
27人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年6月5日 21時