大丈夫 ページ9
ピン、と張られた結界に満足そうに頷いた司咲は立ち上がった。つばさの側に行くと、彼は微笑んでいた。
すとん、とつばさの隣に腰を下ろすと髪を撫でられて肩を引き寄せられた。司咲は大人しくつばさの肩に頭を預けた。
「…生き別れた妹ですって言われたらどうする?」
「突然だね。……言われたの?」
「私にあったこと、つばさくんは聞いてこないじゃない」
「司咲が話すの待とうかなって。あんまりいい話じゃないんだろうし、無理には聞けないよ」
髪を撫でていたつばさの腕に司咲は両手を絡めた。
「博喜さんと一緒に行った喫茶店の店員さんに言われたのよ。妹だ、て。会いたかった、て」
思い出したらまた、泣きそうになってつばさの手のひらに手を重ねた。握られた温もりに安心する。
「私、逃げちゃったから…。後から聞いた話なんだけど、その子の名前は本庄りなだって。私、愛されてなんていなかったのよ。…私だけが捨てられた」
つばさを見上げて、司咲は腕を解いた。
「お願い、つばさくん。私を抱きしめて」
「もちろん」
つばさは司咲の背中に腕を回して、優しく抱きしめた。
「…もっと。もっと強く」
ぎゅっと力強く抱きしめられて、司咲はつばさの背中に縋るように腕を回した。
「大丈夫だよ。大丈夫。…司咲のことを愛している人間はここに1人はいるから」
「…うん」
少しだけ腕を緩めると、つばさは司咲の頬に手を添えてキスをした。柔らかな唇を舌で濡らすと、食べるようにキスをした。
角度を変えると、司咲の涙がつばさの手を濡らした。司咲の唇の割れ目に舌を這わせると、ゆっくり開いた。舌を入れると、優しく絡めた。司咲もつばさの舌に応えるように動かすと、密着度が増えて嬉しくなった。
唇を離して、司咲の濡れた頬を拭った。
「大丈夫。俺が側にいるから」
「つばさくん。ありがとう」
彼の首に両手を回して抱きしめた。
「私、ちゃんと向き合ってみる」
「着いて行こうか?」
「いい。1人で行く。…今日はデートしよう」
「分かった」
「……大好き」
つばさの唇にキスをして微笑むと、頭に彼の手が回った。足りない、とでも言うようにキスをされた。
「…抱きたい」
耳元で爆弾発言をするつばさをどん、と押した。真っ赤になった司咲をつばさは愛おしげに眺めた。
「い、今はダメっ!」
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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年3月16日 12時