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「…これがあったから。私のこと、なんとも思ってない人が書ける内容じゃない。私のこと、ちゃんと愛していたんだって信じていたの。何か理由があるって思っていたから、お母さんのこと嫌いになんてなれないよ」

「……お母さん、夢で見たからお姉ちゃんを捨てたの?本当にお父さんがそんなことすると思ってたの?」

「…りなと悠人は昔から霊や妖怪の類は信じないって言ってたわね。……でもね、実在するのよ。私と司咲はそういうものを視たり、声を聞いたりする力を持っているの。時には神様と言葉を交わすこともできるのよ」

咲子は手紙を司咲に返すと、側に寄ってきた悠人とりなの頭を撫でた。

「私たちの見る夢には意味がある。それが濃く鮮明なものほど現実になるのよ。…たまに、ただの夢だったりするけどね。……あの日、夢でお父さんは泣き叫ぶ司咲をベランダから落として殺したの。5階建てマンションの4階に部屋を借りていたから、落ちたらひとたまりもないわ。だから、私はもう会えないことを覚悟して、施設の前に捨てた。どんな形でも、司咲が生きていてくれればそれで良かったの。元気で、笑っていてくれればそれだけで…」

咲子は3人の我が子を抱きしめて、泣いた。断腸の想いで別れたのだと知って、司咲は涙を我慢できなかった。

「でも、結局傷つけてしまったわよね…。寂しい想いをさせてしまったわよね。ごめんなさい」

「……お母さん。私を守ってくれてありがとう。私はちゃんと幸せだったよ。基くんと清花ちゃんが一緒にいてくれたから。私は大丈夫だったのよ。…もう、泣かないで。苦しまなくていいの」

ぎゅっと母に抱きついた。ずっと感じることのできなかった母の温もりが温かくて溢れた涙は止められなかった。

「私、お母さんの娘で良かった」

司咲は嬉しかった。妹がいても、弟がいても、司咲はちゃんと愛されていたのだ。それを理解して、すごく安心した。心が晴れるのが分かる。

「この、バカ咲子!」

「少しは頼れ。兄妹だろ!」

後ろから2人の兄弟に頭を鷲掴みにされて、痛みに顔を歪めた。

「い、痛いよ。お姉ちゃんお兄ちゃん」

「……はじめまして、司咲ちゃん。君の伯父の夏川陽太です。よろしく」

「司咲ちゃん、久しぶり。まさか咲子の娘だとは思わなかったからびっくりしたわ」

泣いてばかりなのに、また涙が溢れた。

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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年3月16日 12時

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