聞きたいこと ページ44
はじめて知ったことがあった。基裕、清花と司咲は血の繋がった従兄弟だということ。そして、司咲の存在を知る親戚がほとんどいなかったこと。みんなが驚いていた。2歳以前に司咲が会ったことがあるのは、愛子だけなのだそう。だから、知らなかった。タイミングが合わず、兄弟には会わせられずに司咲は捨てられた。
はじめて会った弟はしっかり者で、明るくて元気いっぱいな妹に振り回されて困っていた。『姉さん』と言って涙ぐむ姿を見て、司咲は思わず抱きしめた。
「大丈夫よ、大丈夫」
弟の髪を撫でると、横からりなに抱きつかれた。2人を一緒に抱きしめると、背中を撫でた。泣きそうな瞳にぐっと力を入れた。
「姉さん、俺、姉さんがいるって知らなくて…」
「いいのよ。私だって、りなに会うまで弟妹がいるだなんて知らなかったわ」
司咲は体を離すと、弟の顔を両手で包み込んだ。涙を親指で拭うと、微笑んだ。
「
司咲はちらりと申し訳なさそうな顔をする母を見て、また笑った。
「お母さんと一緒にご飯が食べたい」
司咲の言葉を聞いて、母の咲子は顔を覆った。司咲は2人の弟妹と離れるとしゃがみ込む母の背中を撫でた。
「…聞きたいことがあるの」
「ごめんなさい。司咲、ごめんね」
頬に触れた母の温もりに涙が溢れそうになった。ずっと探していた温もりがそこにあった。
「…どうして、私は…」
言葉の途中で咲子に抱きしめられた。我慢していた涙が溢れて、頬を濡らした。
「…夢を、見たのよ。司咲が2歳の冬に、あの人に…。お父さんに殺されてしまう夢。この子は私たちと一緒にいてはいけないと思った。司咲に恨まれても、私はあなたを守りたかった。私や、おばあちゃんに視えるものが…あの人には視えなかったから。気味悪がるのも当然なんだと思う」
「……私は、恨んでなんていないよ」
体を離すと、司咲は斜めがけしていた小さめのショルダーバッグから紙を取り出した。ずっと大切に保管していた母からの手紙。それを咲子は受け取った。紙はもう古いのにまだきれいだった。シワはあったが、どこも破れてはいなかった。
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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年3月16日 12時