簪 ページ42
食事が終わると、つばさはどこかから箱を持ってきた。
「司咲」
隣に座ると、つばさは司咲の肩を抱き寄せた。顔を覗き込むと、優しく微笑まれた。肩に触れていた手が髪を触りはじめ、司咲は目をパチパチと瞬かせた。
「……あれ?」
髪をくるくるといじり回すつばさの手を掴んで、目の前に持ってきた。握られていたのは、青い花の飾りがついた簪だった。
「……簪って難しいね。……かっこ悪…」
肩を震わせて笑う司咲の唇を奪った。髪を撫でるつばさのキスに目を閉じると、唇が離れていった。瞼を開くと、視界に映るのは色とりどりの花のブーケだった。
「明日だけど、お誕生日おめでとう」
「ありがとう」
両手で花を受け取ると、司咲は嬉しそうに微笑んだ。花の香りが鼻腔をくすぐった。
「嬉しい」
微笑む司咲の顎に指を這わすと、そっと唇を塞いだ。司咲は両手で持ったブーケを潰さないように腕に抱いた。
目を閉じた司咲の唇を貪るように、角度を変えながらキスをした。キスが終わると、頬を撫でられて赤い顔から火が出そうだった。
「好き」
俯く司咲の髪を撫でると、つばさは髪を一房手に取るとそこにキスをした。つばさは立ち上がると冷蔵庫からケーキを持ってきた。
「食べる?」
「うん、食べる!」
色とりどりのフルーツが生クリームの上に飾られていて、おいしそうだった。
「いつ作ったの?そんな時間なかったよね?」
「司咲が寝てる間に作ったの。司咲の寝顔もかわいかったけど、こうやって喜ぶ顔もかわいい」
一瞬、唇を塞ぐとつばさはケーキを切り分けてくれた。さすがに2人でホールケーキ1つは食べられないので、残った分は明日食べることにして冷蔵庫に戻した。
「…おいしい」
「良かった」
「ありがとう、つばさくん。私、基くん以外の人に誕生日祝ってもらったの、はじめてだから本当に嬉しい」
「誕生日を祝うのは当たり前だよ。だって、司咲は俺の特別な人だから」
「つばさくんの誕生日は私が全力で祝うからね」
「楽しみにしてる」
じっと見つめられて、司咲は花をテーブルに置くとつばさの肩に両手を置いて、キスをした。食べ終わったケーキの味がした。
「つばさくん、大好き」
髪を撫でられて、また唇が重なった。
甘い空気が心地よくて、つばさも司咲も感情の向くままにキスをした。
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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年3月16日 12時