験担ぎ ページ40
「こういうのは験担ぎみたいなものだよ。俺は、ジンクスに頼るくらい、司咲と一緒にいたいの。司咲が大好きなの。…キスしようよ。ずっと一緒にいたいよ」
「……必死」
小さく笑う司咲に、つばさはずいっと顔を近づけた。
「司咲はわかってない。いつ、奨悟みたいなライバルが現れるか分からないでしょ」
「…考えすぎよ」
「だって、現に奨悟は司咲のことが好きで、まだ諦めてないでしょ。視線を感じるって、そう言ってたでしょ。それもまだ解決してないし…」
ごめんなさい、と口を開きかけた司咲の肩をつばさは掴んだ。
「司咲を縛りたくはないけど、不安なの。心配なの」
「……分かった」
それで少しでもつばさが安心するのなら、いいと思った。
「キスして」
観覧車が頂上に差し掛かった。目を瞑る司咲の頬に触れて、ゆっくり唇を重ねた。薄暗い観覧車の中、キスをして司咲は頬を染めた。
「…かわいい」
抱きしめられて、司咲はつばさの背中に両腕を回した。
「SNSで騒がれたらなんとかしてね」
「任せて。鬘までつけてるから大丈夫だと思うけど」
髪を撫でられて、優しい声が耳元で聞こえた。
「大好き」
「…私も、好き」
手を握られて、優しい瞳に見つめられた。
「楽しめた？」
「うん！とっても！ありがとうね」
「良かった。司咲の笑顔は本当にかわいい」
「……もう」
観覧車がゆっくりと地上に到着して、つばさは司咲の手を引いて降りた。衣装を返すと、つばさは司咲の手を握ることができなくて寂しそうだった。ずっと手を握っていたいと思ってもらえているのなら、司咲は素直に嬉しかった。
駐車場に着き、車に乗るとつばさの手が司咲の手に触れた。
「司咲」
綿菓子よりも柔らかくて、チョコレートよりも甘い声が司咲の名を呼んだ。顔をつばさに向けると、髪を撫でられて頬に触れられた。
「愛してる」
顔を近付けると、司咲はつばさの胸に手を置いた。少しだけ力を入れてキスを拒んだ。
「ここ、外なんだけど」
「……暗いし、大丈夫だよ」
「ダメ。帰ったらいくらでもしていいから、今は我慢して」
「…分かった」
つばさは握った手を持ち上げると、甲にキスを落とした。
「今はこれで我慢してあげる。…帰ったら覚悟してね」
手を離すと、つばさは車のエンジンをかけてゆっくり動き出した。
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2022年3月16日 12時
