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ジンクス ページ39

ガタン、と急に動いた人に司咲は驚いた。小さな悲鳴と共につばさの腕に抱きつけば、髪を撫でられた。格好つけているが、つばさの体も脅かされるたびにびくりと震えていて、司咲は微笑んだ。きっと司咲の前では格好つけたいのだろうけれど、驚いているのはバレバレだ。司咲に抱きつかれて、嬉しそうなのも隠せてはいなかった。そんな彼が愛おしくて、司咲はつばさの腕に抱きついたまま歩いた。

お化け屋敷の中はたくさんの悲鳴が聞こえていた。約15分の間、驚かされて太陽の下に出た。

「つばさくん」

司咲が見上げる彼は自然に彼女の手を握った。

「本物の方が怖いわね。お化け屋敷は予測できるから、驚くけど楽しい」

「司咲が楽しいなら良かった」

優しい顔で微笑むつばさは司咲の手を引いて歩き出した。かわいく笑う司咲の笑顔を守りたくて、握った手は離さなかった。休憩を挟みながらアトラクションを楽しんだ。観覧車の行列に並んだ頃、陽は落ちて暗くなっていた。周りを見れば、手を繋いだ恋人たちばかりだった。衣装を借りて手を繋ぐ司咲とつばさもあんな風に見えているのかと思うと、恥ずかしくなってきた。司咲はそっとつばさの手を離そうとすると、ぎゅっと握られて引き寄せられた。

「ダメ。離さないで」

「だって、なんか恥ずかしい…」

「司咲と手を繋ぐためにこんな格好してるのに」

「嫌なの?」

「ううん。司咲と一緒ならなんだって楽しい」

繋いだ手を恋人繋ぎにすると、つばさは微笑んだ。恥ずかしくて俯いた司咲の髪をつばさの手が撫でた

「かわいい。大好きだよ」

耳元でそう言われて、司咲は真っ赤な顔でつばさを睨み付けた。

「次の方どうぞ〜」

順番が回ってきて、観覧車に乗り込むと隣同士で座った。

「この観覧車にはジンクスがあってね」

「ジンクス?」

ガタガタと上がっていく観覧車の中で、司咲は首を傾げた。ジンクスなんて、あまり信じてはいないが楽しそうに話しているから、聞いてみた。

「この観覧車の頂上でキスすると永遠に結ばれるとか…」

「ありがちね」

漫画とかでよく見る内容に、それを信じたいつばさが面白くて、司咲は笑った。

「つばさくん、ここでキスなんてしないわよ。またSNSで騒がれるのは御免だわ。それに、そんなことしなくたってつばさくんは私を離したりしないでしょ。私もつばさくんから離れるつもりはないわ」

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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年3月16日 12時

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