遊園地 ページ38
車に揺られて到着したのは遊園地だった。昭和レトロな雰囲気で、衣装も借りられるらしい。せっかくなので衣装を借りることにした。司咲は長い髪を結って侍衣装を借りることにした。つばさは鬘をつけて新撰組の衣装を借りていた。
「お姫様じゃないの?」
「俺がお姫様の衣装着たらおかしいでしょ。司咲こそ、お姫様じゃないの?」
「私は侍がいい。…似合う?」
両手を広げる司咲につばさは頬を緩めた。
「うん。よく似合ってる。かわいいよ」
「…嬉しい。つばさくんも似合ってる。かっこいい!」
ぎゅっとつばさの腕に抱きついた司咲は、ハッとしてすぐに腕を離した。
「ごめんなさい。これは良くないのよね?」
「…でも、俺は嬉しいけどね」
「私、遊園地はじめてだからテンション上がっちゃって…。恥ずかしい」
つばさは司咲の髪を撫でると、優しく微笑んだ。
「連れて来て良かった。司咲が嬉しいなら、俺も嬉しい」
「私、お化け屋敷行きたい!本物とどっちが怖いのかな?あと、観覧車も乗ってみたい!夜景をつばさくんと一緒に見たい!」
「司咲が行きたいところ、全部行こう」
手を引かれて、歩き出した。はじめて来たと言う彼女は物珍しそうにキラキラとした瞳で周囲を見ていた。まるで子どもみたいな姿につばさの胸がキュンと締め付けられた。大好きな恋人が喜ぶ姿が可愛くて、繋いだ手を離したくなくなった。全国的に休日の今日はそこそこ人が入っているのに、どうしても。
まずは昼食を摂ってから、ジェットコースターやコーヒーカップなどの乗り物に乗りながらやっとお化け屋敷へ辿り着いた。おどろおどろしい外観に司咲は目を輝かせた。
「ここ、いっぱいいるね!」
「…怖くないの?」
「害のあるものじゃないから、大丈夫!最近は害のないものは平気なのよね。…晴明様のおかげで」
「そっか。なら、良かった」
「…あのさ、つばさくん」
「ん?」
「手、繋いでいていいの?」
「……今は衣装借りているし、誰も俺が崎山つばさだなんて思わないと思うから大丈夫だよ。コソコソしてた方が逆に怪しまれる。堂々としていれば大丈夫」
「そう?…なら、いいか」
「行こう」
手を握り直したつばさの手を握り返して、司咲は口元に笑みを浮かべた。
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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年3月16日 12時