死神遣いの事件帖 ページ36
5月30日の朝。空は晴れていて、デート日和だった。髪をハーフアップにして、バレッタで留めると身を翻した。黒の膝丈のフレアスカートがふわりと揺れた。
水色のパーカーと薄ピンクの、花柄刺繍がかわいいシャツが司咲の線の細さを際立たせていた。か弱く見えてしまうのは仕方がないだろう。
「司咲」
リビングへ行き、鞄を持った司咲につばさは声をかけた。振り返った司咲は手を広げた彼を見上げて首を傾げた。
「外に出たら、司咲に触れることができないと思うから。少しだけ」
「……うん」
遠慮がちにつばさに近付くと、司咲はすぐに抱きしめられた。胸元に光るネックレスも右手の薬指にはまったリングも髪に飾られたバレッタも、全てつばさからの贈り物だった。
「かわいい」
腕の中で照れている司咲が愛おしくて、肩に手を置くとつばさはゆっくりキスをした。唇が触れる寸前に、受け入れるように目を閉じた司咲がかわいくて、髪を撫でた。
頬を染めて俯いた司咲は鞄を取られ、手を握られて顔を上げた。触れるだけのキスをすると手を引かれた。
「行こう」
「つばさくんは、私のこと本当に好きよね」
「当たり前でしょ。大好きだよ。じゃないと付き合ってないし、キスもしない」
ちゅ、と唇に触れたもの。司咲を見つめて微笑んだつばさは照れて俯く彼女の顔を覗き込んだ。
「司咲は?」
「え?」
「俺のこと、好き?」
「当たり前でしょ!好きじゃなかったら付き合ってない」
司咲の唇にキスをして、つばさは彼女の手を引いて歩き出した。玄関で名残惜しげに手を離すと、車に乗り込むまでつばさは司咲の手に触れなかった。
「どこ行くの?」
車に乗り込んで、シートベルトをすると手を握られた。問うと、つばさは微笑んだ。
「着くまで秘密。喜んでくれたら嬉しい」
「楽しみ」
微笑む司咲の髪を撫でて、つばさは車を発進させた。
「そういえば、死神遣いの事件帖の舞台は司咲も参加するの?」
「ん?ううん。死神遣いの事件帖は私は参加しないよ」
「そっか。残念」
「私は別現場。……あ、でもつばさくん嫉妬させちゃうかな」
司咲は運転するつばさの横顔を見つめた。
「……その。キャストの中に奨悟さんがいて…」
「……奨悟?」
つばさの声が少しだけ低くなった。嫉妬させると分かっているから、なかなか言い出せなかった。
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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年3月16日 12時