やきもち ページ34
半同棲生活が始まって、数ヶ月が経った。季節は初夏。司咲の誕生日が迫っていた。あれ以来、奨悟とは遭遇していなかった。
「つばさくん、つばさくん!」
ソファに座るつばさを後ろから抱きしめると、司咲はスマホの画面をつばさに見せた。
「りなから親戚全員集まるから来てほしいって!」
「…じゃあ、お母さんに会えるの?」
「うん!…やっと会える」
つばさの隣に座ると腕を組んだ。
「…でも、ちょっと不安。…だからね!」
つばさを見上げて微笑んだ。
「基くんについて来てもらおうかなって思ってるの。私を育ててくれた人だから!」
「……まあ、時間には敵わないか…」
「…やきもち?基くんに?」
「……だって、俺の知らない司咲を知ってる人だから」
司咲は微笑むと、つばさの唇にキスをした。
「大丈夫よ。私が好きなのはつばさくんだけよ。基くんは私のお兄ちゃんだから」
「分かってるけど…」
「それでね、その…」
言いにくそうに言い淀む司咲の顔を覗き込んだ。
「どうしたの?」
「日にちが…5月31日なのよ…」
「いいよ。行っておいで」
即答で返ってきた言葉に司咲は目を瞠った。もう少し悩むと思ったから。
「司咲の誕生日を当日に祝えないのは残念だけど…。それは来年でもいいよ。司咲が家族とやっと再会できるんだよ。司咲にとって幸か不幸かは分からないけど、嬉しそうだから、俺も嬉しい」
つばさの手が頬に触れた。愛おしげに撫でられて、そっと唇を重ねた。触れただけの唇は柔らかくて、嬉しかった。
「その代わり、30日は空けといてね。デートしよ」
「……うん」
ぽっと赤くなった頬を隠すように、司咲は下を向いた。
「ありがとう」
ぎゅっと胸に抱きつくと、背中をつばさの腕に包まれた。
「時が来たら、ちゃんとつばさくんに紹介するから。私の家族」
「うん。楽しみにしてる」
「だから、つばさくんもご両親紹介してね」
「……え、それって…」
腕を離して顔を見つめるつばさに司咲は笑った。
「時が来たらね。それより、つばさくん」
司咲はつばさの腕に自分の腕を絡めて、肩に寄りかかった。つばさを見上げて、笑った。
「私、ここに引っ越してきてもいい?アパート、引き払ってもいい?」
「うん、もちろん。……あ、だったらさ」
つばさは司咲の顎を指で掬い上げた。
「2人で住む家探そうか」
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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年3月16日 12時