嫉妬 ページ32
見上げたつばさの瞳が怒っていた。壁に体を押し付けられて、目を泳がせた。
「……優しすぎる」
抱きしめられた。肩に頭を預けて、司咲は腕を背中に回した。髪を撫でられながら、小さく謝った。
「もっと強く拒否して。かつての俺の時みたいに、奨悟には付け入る隙はないんだってちゃんとフってよ」
「不安にさせてごめんなさい。…でも、奨悟さんがフラれてくれないの」
つばさは体を少しだけ離すと唇を重ねた。髪を撫でられて、唇を舌でゆっくりなぞられた。その感覚が恥ずかしくて、司咲はつばさの服をぎゅっと掴んだ。唇を割って舌が入ってきた。
怒っているのに、優しいキスだった。舌を絡めて、腰を撫でられて、足から力が抜けた。
「大丈夫?」
唇を離して支えてくれたつばさが聞いてくる。真っ赤な頬に口付けてつばさは司咲を抱き上げた。
「……恥ずかしい」
顔を覆う司咲はリビングのソファに下ろされて、つばさを見上げた。深いキスをしても、やはり彼の嫉妬は鎮火していない。
司咲はつばさの手を掴むと、両手で握った。
「かわいいな、もう」
唇を塞がれて、頬を撫でられた。
「好きだよ、司咲。大好き」
「私も大好き」
彼の首に腕を回すと、司咲は嬉しそうに微笑んだ。
「奨悟のところに行かないで。2人きりにもなってほしくない。…どうして、奨悟といたの?キスしてたの?」
きっと、ファンには見せられない顔。嫉妬した顔を彼女にも見られたくなくて、つばさは司咲を抱きしめた。その心をつばさだけに向けてほしくて、同じ分だけ愛されたくて。やっと届いた想いは大きくなるばかりで、1人では制御できなかった。本当は司咲を疑ってなんていない。責めるような言葉になってしまったのは、つばさに自信がないから。嫌いだと言われ続けていたから、心を射止め続ける自信が持てずにいるのだ。
「…奨悟さんと一緒にいたのはたまたまよ。偶然会ったの」
「じゃあ、どうしてキスしたの?司咲は俺のこと愛していないの?」
「違う。私はつばさくんのことが好き!」
「なら、どうして!」
肩を押されて、離れると睨まれた。泣きそうな顔をするつばさは司咲を愛しているからこそ、傷ついているのだと分かった。頬を包むとつばさの瞳から涙が溢れた。
「ごめんなさい。突然のことだったから、反応できなかったの。傷つけてごめんなさい」
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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年3月16日 12時