料理上手 ページ28
つばさは抱きしめた腕を離すと、司咲と目を合わせて微笑んだ。
「キスしながら眠った時は流石に驚いたけど」
カッと頬を赤くした司咲はつばさの視線から逃げるように俯いた。
「…ごめんなさい」
「謝らなくていいよ。そのくらい精神的に追い詰められていたってことだから。……気づかなくてごめんね」
司咲は首を左右に振った。つばさに謝らせたいわけではない。つばさには感謝しかないのに。俯いていると、つばさの優しい声が聞こえた。
「ねぇ、キスしていい？」
顎を上向かせられ、あと数ミリで唇が触れそうな距離にまで近付かれて、司咲はつばさの頬に手を伸ばした。そっと引き寄せて唇を重ねた。背中と髪につばさの腕が回って、一瞬離れると今度は角度を変えてキスをされた。
嬉しくて、幸せだった。ずっとこの人の側にいたいと、そう思った。そんな時だった。ぐぅ、とお腹が鳴った。両手でお腹を抑えると、司咲は俯いた。甘い雰囲気はどこへやら、目の前のつばさは笑っていた。
「かわいい。…お腹すいたね。昨日のカレーしかないけど…それでいい？」
「……うん」
つばさは司咲の唇を優しく塞ぐと、髪を撫でた。
「すぐだから、待ってて」
恥ずかしくて、頷くことしかできなくて司咲は顔を覆った。本当にすぐ昼食の準備が整ったが、顔を上げられなかった。
「司咲」
呼ばれて、指の間から目だけを覗かせた。つばさはそんな彼女の頬に手を添えた。
「かわいい」
司咲の手を外させると、つばさは真っ赤な顔を見つめた。目が合って、言葉もなく見つめ合っていた。そっと近付くと、司咲はゆっくりと目を閉じた。優しく重ねられた唇は柔らかくて、温かかった。角度を変えると、つばさは司咲の髪を撫でて唇を離した。
「かわいい。好きだよ」
「…恥ずかしい」
羞恥心で顔を赤くしていると、肩を引き寄せられてピッタリと寄り添った。
「カレー冷めちゃうね」
「…お腹すいた」
「食べよう」
こくりと頷いた司咲は手を合わせた。
カレーを一口口に入れて咀嚼すると、司咲はつばさを見上げた。
「おいしい！」
嬉しそうに笑う司咲が愛おしくて、つばさも笑った。
「ずっと思ってたけど、つばさくん料理上手よね」
「今日はカレーだけど…」
「私、つばさくんのご飯好き」
「それなら良かった」
つばさは司咲の髪を撫でた。
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2022年3月16日 12時
