泣き虫 ページ3
京都に来て4日目の朝。
『ごめんね。会いたい』
そんなメッセージが届いていて、司咲は電話をかけた。久しぶりに通じた電話が嬉しくて、ずっと抱えていた不満なんて置き忘れて、歓喜で何も言えなかった。
『司咲?ごめんね!……怒ってる?』
「…怒っているのは、つばさくんじゃ…」
涙が溢れて、頬を濡らした。何も言葉にならなくて、嗚咽ばかりが司咲の喉を震わせた。
『ごめんね!酷いことしたし、言ったよね。ごめん』
電話越しに聞こえた声はいつも通り優しくて、司咲はそれがどうしようもなく嬉しかった。
『…今から会えない?会って話がしたい』
「………わ、たし…」
絞り出した声には涙が混ざっていて、聞き取りにくくなってしまった。それなのに、電話越しでうん、という声が聞こえた。司咲の言葉を待ってくれている。
「……あのね、私…」
涙を拭って、呼吸を整えた。大好きな人が電話の向こうで優しく笑っている気がした。
「…私も、会いたい…」
『じゃあ、今から…』
「でも、私……。今東京にいないの…」
『えっ?』
「……京都に来てるの」
『…誰と?』
「1人……」
『…分かった。会いに行くよ。待ってて』
司咲はまた溢れた涙を拭った。
『司咲は意外と泣き虫だからね。涙拭いに行くから』
「…そんなに泣いてない」
電話越しに小さく笑う声が聞こえた。
『好きだよ。愛してる。少しだけ待ってて』
「うん。気をつけて来てね。……私、晴明神社で待ってる」
通話が切れて、司咲はスマホを胸に抱きしめた。ホテルのベッドの上に座ったまま、しばらく動けなかった。
現在は朝9時。つばさが到着するのはおそらく15時くらいだろう。
会ったら、たくさん話そう。そして、司咲とつばさの関係に名前をつけようと思う。彼はびっくりして、嬉しそうに笑うのだろうか。
司咲はつばさに早く会いたくて、そわそわと荷造りをはじめた。
京都と東京はかなり距離がある。彼が京都に到着しても、きっとデートはできない。
いつか、彼といろんなところに旅行に行けたら嬉しい。
あまりおしゃれな服は持って来ていない。それでも、彼はかわいいと言うのだろう。司咲の髪につけられた、つばさが贈ったバレッタとピン留めを見たら、彼はどんな反応をするのか、司咲は楽しみだった。
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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年3月16日 12時