ぞっこん ページ16
夜、つばさから電話があった。食事に誘われたけれど、司咲は断る以外の選択肢を持っていなかった。
「ごめんね、つばさくん。先約が…」
目を輝かせて司咲を見る2人の先輩に背を向けた。
「デートしてくる」
『は?』
途端に低くなるつばさの声に慌てた。
「か、勘違いしないで。相手は瑞稀先輩と朱音先輩だから」
『あぁ…。じゃあ、仕方ないね』
柔らかくなったつばさの声が司咲を呼んだ。
『一応言っておくけど、浮気したら許さないからね』
「ありえないわよ」
『うん。だから、一応』
スマホの向こうでつばさを呼ぶ声がした。
『呼ばれた』
「聞こえた。今のは…奨悟さん?」
『…なんで当てるの』
不満そうな声が聞こえて、司咲は微笑んだ。
「分かるわよ。しばらく一緒に仕事してたんだから」
『…危ないから、奨悟には近付かないでね』
「はいはい。ほら、行ってあげなよ」
『司咲。…大好き』
「……私も好きよ」
『楽しんでおいで』
「ありがとう」
電話を切ると肩を抱かれた。
「行きましょうか」
「はい」
会社を出て、近くのファミレスに入った。司咲の前には2人の先輩がニコニコと笑顔で座っていた。手早く注文を済ませると、2対の視線が司咲に向けられた。
「で、詳しく聞きましょうか」
「な、何を…ですか」
「喧嘩してから今日までのこと、全部」
「えぇ。そんなに面白い話ではないです」
「面白いかどうかは私たちが決めるから大丈夫よ」
視線を逸らすと、机の上に置かれた手をがしっと掴まれた。瑞稀と朱音の輝く瞳にため息をついた。
「喧嘩したまま私、京都に行っていたんですよ。晴明様に陰陽道を教えてもらっていました。…つ、……崎山さんから連絡があったのは4日目の朝です。…遠いのに、会いにきてくれて、デート…しました」
「つばさくん、本当に司咲ちゃんのこと大好きなのね!」
「ぞっこん、です」
「それはお互いに、でしょう?」
頬を赤くする司咲を微笑ましそうに見つめた。
「いいな。私も彼氏欲しいわ」
「同感」
「瑞稀先輩、そういえば荒木さんと連絡取り合ってますよね?」
「司咲ちゃん。話を逸らさない。全部吐いてもらうわよ」
「……何故ですか…」
「面白いからに決まってるじゃない!」
「趣味悪いです!」
頬を真っ赤に染め上げながら、女2人の言葉に対抗出来ずに、司咲は結局全て吐かされた。
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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年3月16日 12時