お揃い ページ12
「……うわっ」
訪れたアクセサリーショップのネックレスの値段を見て、司咲は眉を寄せた。高かった。司咲の財布の中身を考えると、とても買えない。
「司咲、こっち来て」
手招きされてそちらへ行けば、先ほどのよりもずっと値段の安いネックレスが並んでいた。
「ていうかさ、どういうのがいいとかあるの?」
「んー?」
首を傾げる司咲に、つばさは微笑んだ。全く分からないという顔だった。
「ないんだ」
「だからつばさくんと一緒に来たのよ。1人じゃ分からないから」
「そっか。うん、任せて。俺が似合うやつ選んであげる」
「ありがとう」
司咲は嬉しそうだった。
「かわいいの選んで」
「了解」
少しだけ屈んでネックレスのデザインをよく見ていた。
「司咲は美人だからなんでも似合うと思うけど…」
司咲はつばさの腰を叩いた。
「いたっ」
叩かれた腰をさすりながら司咲を横目で見て、微笑んだ。目を逸らして照れる彼女がかわいくて、髪を撫でた。
「かわいい」
手を引き寄せると、必然的に距離が近くなって司咲の頬が熱を持った。
「ここ、外なんだけど」
「いいでしょ、このくらい。キスしたいの我慢してるんだから」
そう言われてしまえば何も言えなくて俯いた。つばさは恋人繋ぎをした手を自分の足で隠して、司咲の指の周りを触った。
「これがいいと思う」
渡されたのは小ぶりのハートのチャームがついたネックレスだった。ハートの真ん中には『T』というアルファベットが揺れていた。
「かわいい」
それを眺めて、司咲は微笑んだ。つばさと司咲のイニシャルは『T』だから、離れていても繋がっていると思わせるものだった。
「これ、俺たちのT。次の舞台が始まったら、会えない日が続くと思う。だから、これで俺のこと思い出して」
「…嬉しい」
つばさを見上げて本当に嬉しそうに顔を綻ばせた。つばさはネックレスをトレイに乗せた。
「司咲」
「ん?」
「ペアリング欲しい。……どう?」
「……うん。…職場にはつけていけないけど」
「いいよ。司咲とお揃いのものがいい」
ペアリングのコーナーに行って、司咲はひっと息を呑んだ。2ヶ月分の電気代と同じ額だった。
「つばさくん、高くない?」
「ペアリングでこの値段は安い方だと思うよ。高いのだと3倍くらいの値段するからね」
「ひぃ…」
司咲の反応につばさは笑った。
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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年3月16日 12時