自然消滅 ページ2
近くのお茶屋さんに入って、司咲は緑茶と抹茶パフェを注文した。注文して、後悔した。どちらも緑色だから。石切丸を彷彿とさせる色。会えないつばさに会いたくなってしまう。
「…なんなの…」
好きだと言っていたくせに、急に嫌いだなんて勝手すぎる。司咲は甘いクリームを口に運びながら、スマホを開いた。変わらず、なんの通知もきていなくてガッカリした。
「…連絡くらい、寄越しなさいよ…」
ぼそりと呟いた司咲は泣きそうだった。寂しくて、会いたくて。あの優しい声に名前を呼んでほしくて、優しく抱きしめてほしくて、俯いた。
1人ぼっちのお茶はなんだか味気なくて、どうしてもつばさと一緒がいいと思う。奨悟でも博喜でも、基裕でもなくつばさと一緒にお茶が飲みたい。それだけで司咲は幸せなのに。こんなすれ違い、早いとこ終わらせたくて、また電話をかけた。それでも、メッセージもこないし、出てもくれなかった。
このまま関係が終わるのかもしれない。これが自然消滅というものなのだろうか。でも、付き合っていないのだから、また違うのだろうか。
怖かった。つばさがいなくなることが。司咲の側から消えないでほしいと思った。
ずっと、しつこいくらいにくっついていたつばさがいなくなるのは耐えられなかった。
こんなことになるなら、最初から付き合えば良かったのだろうか。晴明も言っていた。陰陽道は3日やそこらで習得できるものではないと。きっと、年単位の時間をかけて習得していくものなのだろう。3ヶ月なんて短すぎたのだ。
司咲は空になった器に向かって手を合わせると、立ち上がった。お会計をして、晴明神社へと戻る司咲はまだ影を背負っていた。原因はつばさだ。
「……やっぱり、嫌われちゃったかな…」
司咲が今京都にいる理由もつばさだ。彼を守るために強くなりたいと願ったから。
「…つばさくんのバーカ」
拗ねたように道端の石を蹴っ飛ばした。見上げた空は夕焼け色に染まっていて、立ち止まってスマホのカメラに収めた。美しい景色に罪はない。だけど願わくば、つばさと一緒に見たかった。叶わないかもしれないけれど、手を繋いで2人で寄り添って見上げられたら、きっと一生忘れない思い出になる。つばさを好きになってから、まだデートだってしていないのだ。
「…会いたいよ…」
寂しさが司咲の心を苦しめた。
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2022年3月16日 12時
