合点 ページ9
立ち上がる2人につばさは声をかけた。
「助けてくれてありがとう、2人とも」
そう言って笑うが、目は笑っていなかった。
「司咲ちゃんとのキスは忘れてね」
2人が去り、つばさと司咲はもぞもぞと攻防を繰り返した。離れたい司咲と、離したくないつばさ。やはり男に力で敵うはずもなく、司咲は諦めた。
何も言わないつばさは静かに怒っていた。
「…離して」
「嫌だね」
即答でそう言われて司咲はため息をついた。早くつばさの体内から司咲の霊力を抜かないといけないのに。
「…キスしていいから」
そう伝えると、つばさは腕を離すと司咲の肩を反転させて口付けた。強い強い、嫉妬。それをぶつけるように、荒々しいキスをするつばさの背中に腕を回した。少しずつ、つばさの体内から霊力が抜けていくのが分かる。
目を閉じて、彼の熱を今だけは受け入れた。舌が唇に触れて、優しく口の中に侵入してきた。
「……ん」
小さな吐息が漏れたことが恥ずかしくて、慣れない感覚につばさの服をぎゅっと握った。舌が口の中から出て行って、柔らかく触れるだけのキスを何度もされた。霊力の回収は終わっていて、離れたいのに腕を離すことができなかった。響くキスの音。不快感はなく、謎に嬉しかった。
そして、はたと気づいた。何故嬉しいなどと感じるのか。ずっと嫌だったはずなのに、何故、と。
やっとキスが終わると、司咲は顔を両手で覆った。耳も首も赤くて、つばさの目を見られなかった。
「…好き」
耳元で囁かれた言葉は甘くて、溶けてしまいそうだった。
「ごめん」
額にキスをされて、心臓が高鳴った。もう、認めざるを得ない状況になってしまった。でも、伝えるのは癪だったから、口をつぐんだ。そのまま抱きしめられて、つばさの匂いに心臓が脈打った。
水族館デートの日、急に帰られて苛立ったのも、司咲の知らない顔を瑞稀に向けていて胸が痛くなったのも、全て合点がいった。
「……う」
涙が溢れて、頬を濡らした。髪に触れるつばさの胸を叩いた。
「…ごめん」
「…あなたなんて、大っ嫌いよ!」
「…うん」
もう一度、つばさの胸を叩いた。
ただただ、怖かった。晴明が力を貸してくれなければ負けていただろう。それほどに強い妖力を持っていた。最初から狙いは司咲だったと言った。司咲が大切だと思えば思うほど、その人を危険に晒してしまうのだろうか。
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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年2月16日 13時