許せない ページ8
司咲は合わせた唇からつばさの体内に流れた霊力を感じる。頬を固定して、まずは裕貴から分け与えられた霊力を取り除くことに成功した。
「…どういう…」
戸惑っているつばさから離れると、側で項垂れている裕貴の肩を揺さぶった。反応はない。司咲が無理をさせてしまったのだから無理もない。霊力を消耗すると、大体の人は眠りに落ちる。そして、霊力が回復すると同時に目を覚ます。司咲のように、慣れていないと意識を保ってはいられない。
つばさの目の前で、司咲は裕貴にキスをした。
「……え…」
ざわりと不快感がつばさの胸を支配した。腕を掴むつばさの手を振り払った。ぶり返す嫉妬心がつばさの表情を強張らせた。
「…離れて」
言葉は届かなくて、裕貴の瞼が震えた時、司咲は唇を離した。
「…あれ、俺…」
じっと司咲に見られて、裕貴は目を逸らした。
「鳥ちゃん、力を貸してくれてありがとう。ごめんなさい。無理をさせてしまって…」
「…ええけど、つばさがすごい顔しとるから…」
「…あはは」
苦笑いを浮かべて、司咲はつばさの肩に触れた。
「…勘違いしないでってば」
むに、と頬を摘む司咲をつばさは睨みつけた。
「……なんで」
ぎゅっと唇を引き結ぶつばさは拗ねているようだ。その唇にもう一度口付けた。目を覆う裕貴は指の隙間からその光景を見ていた。つばさが目を覚ました時に他の人は撤収していて、広い空間に4人だけが集まっていた。
今度は涼星の霊力を取り出すと、司咲は長身の肩を揺さぶった。唇が重なった。
何故、好きな人が他の男にキスする姿を見せられなければいけないのか。何故、つばさにもキスをしてきたのか、分からない。見たくないけれど、目を逸らすこともできなくて、震える手を握り込んだ。
涼星の瞼が震えて、目を覚ました。唇を離した司咲をつばさは即座に抱き込んだ。絶対に逃さないと強く強く抱きしめた。
「…許せない」
ぽそっと呟いたつばさの声は司咲にも聞こえていた。
「えっ…….と。キスされたの?俺」
ぼやっと呟く裕貴に司咲は両手を顔の前で合わせた。
「ごめんなさい。借りた霊力を返す方法はそれしかなくて」
申し訳なさそうにそう言う司咲の後ろでつばさが鬼の形相をしていた。彼の嫉妬が伝わってきそうで、裕貴は涼星の背中を叩いた。
「行くぞ、涼星」
「あ、はい」
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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年2月16日 13時