後裔 ページ7
司咲は涼星と裕貴を交互に見つめた。
「ごめんなさい」
一言、謝った。涙は相変わらず引かない。つばさの頬に触れると、司咲は小さく笑った。そういえば、彼にはキスばかりされていた気がする。司咲からするのは、はじめてだ。意識があったなら、驚いて嬉しそうに笑うのだろうか。
「…勘違いしないでね」
司咲の唇がつばさのものに触れた。唇から司咲は体内にある、全ての霊力を彼の体に流し込んだ。裕貴と涼星の手を上から押すと、彼らの霊力も全て彼の体に流れていく。
触れた唇から、頬が、耳が赤くなっていくのがわかる。それでも、司咲はその口付けをやめるわけにはいかない。つばさを助けたいが一心で、霊力を注ぎ込んだ。
「…お願いっ！」
つばさの胸に両手をかざした。
『愛していないなら、その顔はどう説明する？』
頬が赤いのも、胸の高鳴りも気のせいだと思いたい。今ここでは何も認めたくない。
「破！」
空気が震えた。想像以上の力の渦に司咲は驚いて、バランスを崩した。
「………え？」
つばさの胸に倒れ込んだ司咲は目を見開いた。
『よく頑張ったな。…なに、私の力を少し上乗せしただけだ。妖怪は調伏された』
「……せい…めいさま…」
起き上がろうとする司咲を晴明は制した。
『もう立ち上がる力も残っておらぬだろう。そのままで良い』
「……はい」
どうして、と目で訴えると彼は微笑んだ。
『私の後裔を助けただけさ』
「……え？」
『また京都に遊びにおいで。今はやることがまだあるだろう』
ぎゅぅっと体が抱きしめられる。視線をあげると、彼の瞳と目があった。両手でつばさの頬に触れた。掌から感じる温もりに安心して、涙が溢れた。つばさの肩に顔を押し付けて、司咲はポコポコと数回肩を叩いた。
「バカっ！妖怪なんかに取り憑かれてんじゃないわよ！」
「……ごめん。ありがとう」
司咲を抱きしめたまま、起き上がった。激しく高鳴る心臓の音が彼女に聞こえていないか、不安になった。起きてすぐに飛び込んできたのは好きな人の顔だった。どんなに嬉しかったか、彼女は知らないだろう。
抱えていた嫉妬なんて、消し飛ぶほどつばさは司咲を強く抱きしめた。
「…勘違い、しないでね」
司咲がそう言って微笑んだ。驚く間もなく司咲の唇がつばさの唇に重なった。つばさは目を見開いて、そっと目を閉じた。
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2022年2月16日 13時
