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頬に触れた手の感触。温かい手が失われるのが嫌だった。死にそうだというのに、嬉しそうに頬を緩める彼が腹立たしかった。助かったら一発は絶対殴ろうと心に決めた。

腕から力が抜けた。なりふり構ってはいられない。

「涼星くん、鳥ちゃん、力を貸して。崎山さんは、絶対に死なせない。一発……いや、三発くらいは殴らないといけないから」

「ええよ。何すればええ?」

「…崎山さんの、手を握って。掌を合わせる感じで」

司咲はポケットから札を出してつばさの両手に貼った。札が入り口となり、2人の霊力を分けてもらえるようになる。

『愛しいと、認めればいいのに』

無視をして、司咲は両手でつばさの頬に触れた。目を閉じて、息を吸い込んだ。額を合わせて、何かを呟く司咲を中心に空気が渦を巻く。何人かがその風に煽られて転倒した。心の中で謝りつつ、司咲は詠唱をやめなかった。今持っている全ての技術を駆使して、妖怪を打ち倒すための方程式を考える。裕貴と涼星の力を借りて妖怪を倒すことができるのか、正直なところ分からない。五分五分といったところだろうか。入り込まれたのが博喜だったなら、つばさにも力を借りて妖怪を倒すことができたかもしれない。

それでも、勝ち目なんてないと分かっていても司咲はその妖怪を倒さないといけない。つばさの体から出て行ったとしても、他で悪さをしないなんて保証はどこにもないのだから。

詠唱が終わる。霊力と妖力がぶつかり合う。押し負ける、とそう思った時、司咲は右手を真横に払った。結界が人を衝撃から守る。

「…崎山さんを返して…!その人はあなたみたいな邪なものが簡単に触れていいような人じゃない!」

『お前は俺の母を奪っただろう?』

「……え?」

『母さんがお前に接触した時はそこの男を好いているようだったが。今は違う。俺はお前にとって1番大事なものを奪う…!』

ハッと思い出した。女の霊が博喜に取り憑いた時のことを。彼女は司咲に博喜を『好いた男』だと表現していた。

「あの人の息子ってあなたなの。でも、本当の親子ではないでしょう?あなたは妖怪であの人は霊だったわ」

『だからなんだよ!俺は母さんと人の絶望する顔を見るのが好きだった!なのにお前が邪魔したんだ!』

「そんな不届きなものを祓わずにはいられないわよ。崎山さんは私が護るの!」

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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年2月16日 13時

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