怒り ページ47
翌日のこと。Twitterが騒がれていて、その渦中に奨悟と司咲がいることに気がついた。発端は一枚の画像だった。抱きしめ合ってキスをしているそれに、嫉妬をしないわけがなくて部屋の中を意味もなく歩き回った。
彼女が昨日、つばさに会おうとしなかった理由はこれなのだろうか。彼女の心は奨悟に向いてしまったのだろうか。
ざわりと黒い何かが胸の中を満たしていく。家を出て、司咲の家へ向かった。
好きな人に、やっと手が届きそうだったのに他の人に取られるなんて我慢できなかった。
チャイムを押すと、ゆっくりとドアが開いた。驚く司咲がドアを閉める前に踏み入ると、彼女にキスをした。荒々しく奪った唇は、簡単につばさを受け入れた。
キスをしながら、どさりと玄関に押し倒すと彼女は真っ赤な顔で見上げていた。顎を掴んで、唇に噛みつくと舌を口の中に入れた。驚いて抵抗する司咲を床に縫い付けて強引に深いキスをした。
「……どうして」
震える声でそう言った司咲につばさは覆い被さったまま、スマホの画面を見せた。
「これ、どういうこと？」
つばさの瞳が怒っていた。それに気づいたけれど、今の司咲には怒りを鎮める余裕がなかった。
何も言わない司咲の顎を掴んだ。
「俺は司咲のことが好きで、付き合ってないけど君も気持ちは同じだと思ってたけど、勘違いだったの？」
「…違…っ」
「だったらどうして、奨悟と抱きしめ合ってキスしてるの？昨日会いに行ったのは博喜のはずでしょ⁉︎」
ギリッとつばさが奥歯を噛み締めた。はじめてだった。彼が司咲に声を荒げたのは。
司咲はつばさの頬に手を伸ばそうとして、払われた。睨みつけられて、言葉を失った。
「……はじめから奨悟のところに行けばよかったのに。俺の心を弄ぶようなことしないでよ‼︎」
「…違うっ」
ぎゅぅっと肩を押さえつけられて、司咲は起き上がることができなかった。彼を抱きしめることもできなくて、悲しくて涙が溢れた。
「…泣きたいのはこっちだよ。…昨日、俺に会ってくれなかったのもこういうことだったんだ」
「聞いて。違うの」
「聞きたくないよ！違わないでしょ！」
いつも優しいつばさが今日は全然優しくなかった。
「司咲ちゃんなんて…嫌い…っ！」
体の拘束が解けると、つばさは走って行ってしまった。ただ涙が溢れて頬を濡らした。もう何も、考えられなかった。
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2022年2月16日 13時
