呼び捨て ページ39
朝ご飯を食べて、食器を洗うと司咲は髪をポニーテールに結い上げた。その髪を後ろから触る手があった。
「かわいい」
髪にキスを落として、後ろからふわっと抱きしめられた。つばさの匂いに包まれて、心臓が高鳴った。
「…離して」
「いいでしょ、少しくらい」
「朝からずっとくっついているんだから、いい加減離して」
「だって、くっついていたい」
「仕事は？」
「……俺と一緒にいたくないって言うの？」
「何度も言うけど、まだ恋人じゃないのよ。過度な接触は控えていただきたいわ。それに、シンプルに邪魔よ」
ばっさりと切り捨てた司咲はつばさの腕をすり抜けて、窓を開けた。気温は冷たいけれど、太陽の光が明るかった。
「いい天気ね」
かけ布団を持ち上げると、それをベランダの手すりにかけて、布団バサミで留めた。敷き布団も同様に干そうと持ち上げようとする司咲を制してつばさは敷き布団を干した。
「ありがとう」
手を持ち上げられて、手の甲にキスをされた。
「……司咲がいけないんだよ。俺に嫉妬させるから」
呼び捨てにされて、司咲の胸がキュンと高鳴った。
「昨日からずっと嫉妬してるの」
顎を優しく掴まれて、キスをされた。肩に手を置いて、やはりその手に力は入らなかった。やはり、司咲は彼のキスを拒めない。目を閉じると、顔を包まれて顔の角度を変えられた。
「……はっ……」
やっと唇が離されて、真っ赤な顔でつばさを睨んだ。
「かわいい…」
頬に唇を押しつけると、抱きしめた。
「2時間だけ許したけど、本当は嫌」
髪を撫でると、司咲の両手が腰に回ってきた。
「付き合っていないんだから、俺に許可取る必要なんてなかったでしょ。どうして正直に言ったの？俺が簡単に頷くわけないって分かってたよね？」
「……嘘はつきたくない。だから、堂々と行きたいの」
「頷かなかったらどうしてたの？」
「頷いてくれるまでお話するだけよ」
体を離すと、つばさは司咲の髪に触れた。
「……本当、好き」
「知ってる」
髪から頬に手が滑り、唇に短いキスをした。それだけで司咲の頬が赤く染まる。
「…だから、過度な接触は…」
「司咲だって抱きつくでしょ」
「わ、私はいいのよ！」
ポカッと腕を叩かれた。
「理不尽…」
身を翻す司咲は洗濯物をかき集めて、洗濯機に放り込むと洗剤と柔軟剤を入れて稼働させた。
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2022年2月16日 13時
