一緒に ページ38
目を覚ますと、誰かの腕の中。
「おはよう」
頭上から聞こえた声に恥ずかしくなって、顔を覆った。何故一緒に寝ているのか、全く覚えていない。
「………おはよ」
「手は出していないから大丈夫だよ。……まだ、ね」
心を読んだかのようにそう言ってくるつばさを見上げた。
「布団に入った瞬間に寝るからびっくりした。疲れていたんだね」
そっと額に口付けて、つばさは顔を覆う手を優しく外させた。赤い頬に触れた。唇を重ねると、ゆっくり目を閉じるのが分かる。両手が二の腕に触れて、つばさは火がついたようにキスをした。軽く下唇を噛むと、手が震えた。
「もう、かわいい」
抱きしめられて、髪を撫でられた。茹であがったタコよりも真っ赤な顔で、司咲はつばさに身を委ねていた。
「愛してる」
囁く言葉は甘すぎて、溶けてしまいそうだった。
「ずっと一緒にいたい」
「それは難しいわね」
首に両腕を回す司咲はそう言って微笑んだ。
「それは分かってるけど」
頬にキスをして、司咲の髪に頬を寄せた。
「こうやって、朝起きたら司咲ちゃんがいて。一緒にご飯を食べて、キスをして一緒に仕事に行って、帰ったらまたキスをして一緒にご飯を食べて、同じ布団で寝る。休みの日はデートしたり、家でゆっくり過ごすのもいいよね」
「なにそれ」
「一緒に暮らしたいって意味なんだけど」
「付き合ってもないのに」
うっと言葉に詰まった。待つと決めたから、何も言えない。
「……あまり長く待たせると拗ねるからね」
「それは面倒ね」
「俺、独占欲強いし嫉妬深いし我慢強くないけど、永遠に司咲ちゃんだけを愛しているから」
「あはは。知ってる」
腕を離す司咲をつばさは抱きしめながら仰向けになった。
「わっ」
驚いてつばさの肩を掴む司咲の頭はつばさの首元にぶつかり、目は強く瞑っていた。つばさの体の上に乗る司咲はゆっくり目を開けた。
「かわいい」
つばさは頬を真っ赤にする司咲を抱いたまま、体を起こした。離れようとする司咲の手を握った。
「好きだよ」
声も、顔も甘くて司咲にはとても受け止めきれなかった。逃げるように立ち上がった司咲は洗面所に逃げ込んだ。冷たい水で顔を洗って、服を着替えた。青いトレーナーと黒いズボン。我ながら女子力のない格好だと思った。ため息をついて、洗面所から出た。
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2022年2月16日 13時
