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本気で心配してくれる来夢に司咲は笑顔で答えた。

「うちの先輩たち」

「ああ、仲良いよね」

「うん、まあね」

「あ、司咲ちゃん」

声をかけられて、見上げると博喜がいた。

「博喜さん。お疲れ様」

「司咲ちゃんもお疲れ様」

彼は司咲の隣に腰を下ろすと、何かを思い出したような顔をした。

「明日、お茶行く?…ほら、約束してたから」

「うん、もちろん。楽しみ」

「でも、2人っていうのはつばさ的にあまり良くないんじゃない?」

「んー…。じゃあ、来夢くんも来る?」

「嬉しいけど、ごめん。明日は1日仕事」

「そうなんだ。大変ね」

司咲は自分よりも背丈のある来夢の髪を撫でた。頑張る彼にエールを送りたかった。

「ありがとう、司咲ちゃん」

「うん」

優しく微笑むと、首に誰かの腕が回ってきた。

「きゃっ」

引き寄せられて、身動きが取れなくなった。それが誰かなんて、すぐに分かった。つばさの温もりじゃないことが少しだけ不服だった。

「…離して」

「…離さない。ねえ、僕じゃダメなの?」

胸が痛くなった。奨悟のファンである司咲はその気持ちに応えてあげられない。つばさに恋をしてしまったから、他の誰も受け入れられない。

「…ごめ」

奨悟の手が司咲の続きの言葉を塞いだ。口を塞ぐ手が聞きたくないのだと、伝えてくる。

「…少しだけ抜け出さない?」

躊躇いがちのその言葉に、司咲は首を横に振った。何をされても、司咲は奨悟の気持ちには応えられない。だから、期待はさせたくないのだ。

「…そっか。分かった」

腕が緩んだ。やっと身動きが取れるようになって、司咲は奨悟から離れると振り向いた。

「ごめんなさい」

諦めてほしくて、そう言った。悲しそうな顔をする奨悟に胸が痛む。

「…好きだよ。…諦められないよ…」

距離を詰めた。2人きりになるのを拒まれてもなお、気持ちは溢れ続ける。膝をずっと見つめ続けている司咲の腕を掴んだ。

「……え」

驚く司咲に膝立ちで近付くと、唇を奪った。

「……嫌っ」

腕を取られていて、抵抗できない司咲はせめてもの抵抗として、顔を背けた。拒まれたことに傷つかないわけがない。それでも、想うことはやめられなくてそっと立ち上がった。

「ごめん」

彼はそう言って去って行った。背中に哀愁を背負って。

司咲は小さくため息をついて、来夢に寄りかかった。

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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年2月16日 13時

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