セクハラ ページ30
今回の作品に関わった全ての人が一同に介しての、打ち上げがはじまった。大きな飲み屋を予約してあったようで、ちゃんと一部屋に全員が着席していた。ありがたい話を聞いて、みんなで乾杯をした。
「司咲ちゃん、オレンジジュースで良かったの?」
「はい。私、お酒入るとヤバいらしいので」
手を合わせて、目の前の漬物に手を伸ばした。
「ん、おいしい!」
カリカリとカブを噛んで、飲み込んだ。唐揚げや刺身やサーモンのマリネ等、並ぶ料理はテーブルごと食べきれないほどの量があった。
「これもおいしいですね!」
キラキラな笑顔で司咲は両隣の瑞稀と朱音に微笑みかけた。たくさんあった料理はものの1時間で半分にまで減っていた。ほとんどが司咲の胃の中だ。
「司咲ちゃんって、細っこい割にはよく食べるわよね」
「え?あ、すみません!私ばっかり食べてますよね」
慌てる司咲に瑞稀と朱音は手を横に振った。
「ああ、違うわよ」
「量が多いから、食べられるか心配だったけど、司咲ちゃんがたくさん食べてくれるから安心してるだけ」
お酒も入り、ほんのりと赤らんだ頬がかわいくて司咲は笑った。
「なら良かったです。でも、瑞稀先輩も朱音先輩もご飯進んでないですね?」
「メインはお酒だからね」
「そうそう。ご飯よりお酒が進むわ」
「酒豪ですか」
そう言って笑いながら、司咲は卵焼きを食べた。ほんのり甘くて、出汁がきいている、和風な味付けだった。
「おいしい!」
「そんなに食べてるのに、なんでそんな細いのかしら」
「わっ」
瑞稀の手が司咲のお腹に触れる。
「わ、触ると見た目よりも細いわね」
「は、離してください…」
瑞稀の手をお腹から剥がした。細さを悟られるのはあまり好きではないのだ。
「どれどれ…」
両手で腰を触られて、司咲は耐えきれずに立ち上がった。
「わ、私!お散歩してきます!」
背を向けた彼女に2人は手を振った。
司咲はてくてくと部屋を横断する。手も足も腹も腰も、細くてそれがいつも嫌なのだ。今は冬だから、長袖で過ごせるけれど、夏になると服が薄くなり、細さが際立つ。いつも夏はあまり好きじゃない。
「あれ、司咲ちゃん!」
来夢が手を振っていて、司咲は微笑んで彼に近づいた。
「来夢くん、お疲れ様」
「お疲れ様。迷子?」
「…セクハラされるから逃げてきた」
「セクハラ?誰に…?」
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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年2月16日 13時