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力加減 ページ22

悲しそうに顔を歪めるつばさの手が頬に触れた。

「……断って…」

抱きしめられて、司咲の心臓が激しく脈打つ。

「……奨悟のところに行ったら、許さないから」

長いこと片想いをしていて、やっと恋敵がいなくなったと思ったら、また新たに恋敵が現れる。

「…君を1番愛しているのは、俺だから。俺が君を幸せにする」

ぎゅぅぅっと強く抱きしめられて、声が出せなかった。痛いほどに、彼の嫉妬が伝わってきて何も言えない。

「奨悟と付き合ったら、絶対許さない。…許さないから。…断ってよ。俺にしてよ」

顔がゆっくり迫ってきて、司咲は目を閉じた。唇が触れてつばさの手が頭の後ろを押さえた。逃げ場を封じられてするキスはドキドキした。

「……キス、された」

「……見てたよ。遠くからでも司咲ちゃんだって分かった」

「……崎山さんといい、奨悟さんといいどうしてキスしてくるのかしら」

「…司咲ちゃんは隙だらけだから…。誰にも触れさせたくないのに…」

頬を両手で包まれて、優しくて短いキスをされた。

「とにかく、奨悟の告白は断って」

強く強く、抱きしめられた。

「……じゃないと、嫉妬に狂って俺何するか分からない…」

「脅し?」

「……そうだよ。最低で心が狭い俺は、君を襲うかもしれない」

「……無理心中でもしようっての?あなたのファンが悲しむからやめて」

「そうじゃないけど……。好きだよ」

「うっ」

さらに強くなるつばさの腕の中で、司咲は苦しげに声を漏らした。

「大好き。…ねえ、好きって言って。俺を選んでよ」

強く抱きしめられながら、司咲は何も言葉に出来なかった。そんなことより、腕の力を緩めてほしくてつばさの胸を押した。けれど、緩むどころか強まる一方で呼吸ができない。背に腹は替えられないと、司咲はつばさを思いっきり突き飛ばした。

数回咳いた司咲はキッとつばさを睨んだ。その瞳を見てから、ハッとした。

「…ごめん」

尻もちをついたつばさは彼女に近づくために腰を浮かせた。

「ごめん」

力加減を間違えた。突き飛ばされなかったら、つばさは彼女を抱き殺していたかもしれない。そう考えると、途端に自分がしたことが恐ろしくなって、つばさは一度司咲から離れようと立ち上がった。

「……まって…」

手を掴まれた。か弱い声だった。

「でも…。俺、今君を…」

甘味→←本当は



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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年2月16日 13時

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