騎士 ページ20
休憩が終わると、戻って行く司咲につばさは着いて行った。
「……何よ」
ドアの前、司咲はつばさを横目で見てドアを開けた。
「あ、帰ってきた」
「崎山さんも一緒だわ」
瑞稀と朱音はキャッキャと勝手に盛り上がっている。話題はもちろん、司咲とつばさの話。
「…また時間に君を取られる」
手を掴まれて、司咲は足を止めた。
「本当はずっと一緒にいたい。…でも、仕事だから仕方ないよね」
肩越しにつばさを見れば、嬉しそうに微笑まれた。
「俺のこと、見てて。司咲ちゃんにいいとこ見せるために、俺頑張るから」
くるりと振り返ると、司咲はつばさの手を押し返すと小さく手を上げた。
「…じゃあね」
「寂しいな。…ねえ、司咲ちゃんは寂しくないの？」
その問いに、司咲はただ笑うだけで何も答えなかった。答えるための材料を持ち合わせてはいなかった。
不意に抱きしめられて、司咲は目を瞠った。
「仕事終わったら、待ってて。迎えに来るから。絶対だからね」
「…分かったわよ」
「愛してる」
髪を撫でて、つばさは去って行った。
肩を両側から掴まれて、司咲は嫌な予感がした。
「詳しく聞かせて。つばさくんとのお昼休憩はどうだった？」
「えっ」
「愛してる、だって。今時、恋人でも夫婦でもなかなか口にできない言葉よ。…司咲ちゃん、愛されているわね」
「……やめてください」
「ずっと一緒にいたい、だなんてつばさくんかわいいわね。ねえ、そう思わない？」
瑞稀に問われて、司咲は顔を逸らした。顔が赤く染まっていくのがよく分かる。
「名前が司咲とつばさだもの。ずっとお似合いだと思ってたのよね」
「名前が似てるだけじゃないですか」
真っ赤な顔で笑う司咲に瑞稀と朱音もつられるように笑った。
「仕事が終わったら、王子様がお姫様を迎えにくるみたいだし、頑張りましょうか」
「ええ、そうね」
「…はい。あ、でも私はお姫様は嫌です」
不服を申し立てると、瑞稀と朱音は声を立てて笑った。恋バナが大好きな先輩2人はつばさと司咲を温かく見守ってくれていて、嬉しかった。
「私はお姫様を守る騎士がいいです」
「じゃあ、お姫様はつばさくんかな？」
「ふっ」
お姫様の格好をするつばさを勝手に想像して、司咲は爆笑してしまった。
「傑作です！」
親指を立てて笑う司咲は目元に涙を浮かべていた。
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2022年2月16日 13時
