ライバル ページ19
「…最大にして最強のライバル…」
「はぁ?」
「今朝も今も、時間が司咲ちゃんを奪っていく…」
本気で悲しそうな顔をするつばさに、司咲は何も言えなかった。
つばさは手を合わせると、箸を持った。倣うように司咲も手を合わせると、箸を持つ。色とりどりでとても美味しそうなお弁当で、何から食べようか迷っていた。
「はい、あーん」
唇に触れたのは、つばさの箸だった。驚きで目を見開く司咲につばさは優しく微笑んだ。
「あーん」
断れなくて、口を開くとウインナーを入れられた。もぐもぐと口を動かすが、恥ずかしさで味は分からなかった。
「美味しい?」
頷く司咲の頬が染まっていく。ウインナーを飲み込んで、司咲はつばさを見上げた。が、あまりの顔の近さに顔から火が出そうだった。
「……ち、近い」
顔を逸らして、司咲は卵焼きを箸でつまんだ。綺麗な黄色の卵焼き。絶対においしい。ふと手首を掴まれた。つばさを見上げる司咲は見た。司咲の持つ箸がつばさの口の中に入る様を。卵焼きを食べたつばさはにっこり微笑むと、そっと司咲の唇にキスをした。
柔らかくて、優しいキス。もっと、と求めてしまいそうになって、慌てて踏みとどまった。
頬を包まれて、顎を掬われた。密着箇所が増えて、どうしようもなく恥ずかしくて、目を閉じた。
唇が離れても、目を開けられなくて司咲は俯いた。耳まで赤く染まる姿がかわいくてつばさは司咲を抱きしめた。
「ごめんね」
髪を撫でるつばさの腕の中で、司咲は怒ることもできずに肩に寄りかかっていた。
「怒らないの?」
「……呆れてるの。…何回キスすれば気が済むのよ」
「…永遠に」
「バカじゃないの」
つばさから離れると、司咲は食べ損ねた卵焼きを取ると口に運んだ。もぐもぐと口を動かす彼女を見つめて、ふわりと微笑んだ。
「間接キス」
「崎山さんのせいよ!」
つばさの肩をバシッと叩いた司咲は彼を無視して食事を再開させた。
「ん。おいしい…」
「良かった」
つばさも昼食の続きを食べはじめ、あっという間にお弁当の中身は空になった。
「ごちそうさまでした。ありがとう」
微笑む司咲の両手を握った。やっぱり、どうしても。変わらない想いがつばさの胸を揺さぶった。
「好き」
抱きしめた体は細くて、温かかった。
「愛してる」
「はいはい」
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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年2月16日 13時