お弁当 ページ18
「司咲ちゃん」
「え、何？」
笑顔でやってきたつばさは、司咲の手を掴んだ。
「これからお昼？」
「……そうだけど」
「一緒に食べよう」
瑞稀と朱音に視線を向ければ、笑顔で手を振っていた。ため息をついて、頷けば手を引かれた。
「でも、私買わないとないわ」
「大丈夫。そうだと思って2人分用意してきたから」
「…崎山さんはケータリングあるんじゃないの？」
「でも、司咲ちゃんと2人で食べたかったから」
休憩室のような部屋に入ると、彼は持っていたお弁当を机の上に置いた。それを広げる前に、つばさは司咲を抱き寄せた。
「ちょっと…」
「今は誰もいないからいいでしょ」
抱きしめる腕は強まるばかりで、離してくれそうになかった。
「愛してる」
ボソリと耳元で囁かれて、司咲は頬を赤く染めた。
「ずっと2人きりになりたかった」
「朝一緒にいたじゃない」
「…全然足りない。四六時中だって一緒にいたい」
「……それはキツい」
口ではそう言いながら、司咲はつばさの言葉に嬉しそうに頬を緩めた。
「……好き」
「はいはい」
「大好きだよ。愛してる」
「はいはい」
軽く流しながら、バクバクと鳴る心臓を誤魔化すようにつばさの胸を押した。
「…お腹空いた」
「…ごはん食べようか」
つばさは椅子を引くと、司咲を座らせて自分もその左隣の椅子に腰掛けた。肩が触れるか触れないかの距離にまで近寄った彼を横目で見た。
「……近い」
「なんか恥ずかしいね」
「…離れてって言ってるんだけど」
お弁当の結び目を解きながら、つばさは司咲を見つめて優しく微笑んだ。
「もっと近付きたいな」
つばさの手が司咲の右耳を覆うように触れた。そっと近付くと、つばさは司咲の左頬に唇をつけた。驚く司咲の頬が赤く染まっていくのを見て、つばさは嬉しそうに微笑んだ。
「かわいい」
お弁当を開いたつばさは、箸を司咲の前に置く。
「…何するのよ」
全力疾走をはじめる心臓をこっそり宥めながら、司咲はつばさを睨みつける。
「ああ、かわいい」
ぎゅぅっとまた抱きしめられて、司咲は言葉を失った。素直に喜べない自分が恨めしい。
「好き」
司咲の華奢な体がつばさの腕にすっぽりと収まっていた。
「好き、好き好き好き！」
「分かったから」
同じ言葉を繰り返すつばさを押し返した。
「時間なくなるわよ」
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2022年2月16日 13時
