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3ヶ月 ページ15

「正直に言ったらキスさせてくれたの?」

首を横に振る彼女は顔をあげてくれなかった。

「今のキスで俺は元気になったよ。だから大丈夫」

司咲はつばさの胸を叩いた。恥ずかしくて、それが彼に伝わっていないか不安になった。

「……好き」

司咲の体を抱きしめて、つばさは髪を撫でた。胸に置かれた手から鼓動の早さが伝わっている気がするが、そんなものは些末な問題だった。

「…司咲ちゃんを好きになって、どのくらい経つのかな?」

「…知らないわよ、そんなの」

「ほぼ一目惚れだったよ。会うたびに惚れていった」

司咲に片想いしている時間はとても長くも短くも感じられる。けれど、実際は1年も経っていないのだから、どちらでもない。

「何度拒まれても、俺が司咲ちゃんを想う気持ちは変わらないよ」

つばさの腕の中で、司咲は瞳を揺らした。優しい声に囁かれて、鼓動がうるさい。司咲の手が弱々しくつばさの胸を押す。彼の鼓動が早くて恥ずかしい。

本当は想い合っている2人。素直になれない司咲はただ顔を真っ赤に染め上げているだけだった。抱きしめ直したつばさの唇が頬に一瞬だけ触れた。

「愛してる。……でも、君はそうではないから。考えていた」

つばさは司咲の体を離すと、泣きそうな瞳で震える声を必死に紡いだ。

「…俺は、君に出会って恋をしたこと。運命だと思った…。運命に、したかった……」

頬につばさの手が触れて、司咲はただ黙って紡がれる言葉を聞いた。

「……3ヶ月。その間に司咲ちゃんの心を動かせなかったら………、諦めるから。だから、俺のこと考えてほしい」

髪を撫でて、頬に触れて、抱きしめた。

「…諦められるの?」

「……努力はする。でもね、司咲ちゃんの隣にいるのも幸せにするのも俺がいい。……俺じゃないなら、司咲ちゃんの幸せなんて願えそうにないよ」

「……分かった」

司咲はつばさの背中に両手を回した。素直じゃない司咲はそれが精一杯だった。最初から負けているのに、こんなことする意味はない。でも、良かったと思う。3ヶ月の猶予ができた。つばさと共にいるために、強くなると決めたから。その間に出来るだけ強くなって、胸を張って隣に立てるように。

「…好き」

司咲は小さく笑った。夢の中でつばさにフラれたことは絶対に予知夢にはならないのだと、嬉しくなった。

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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年2月16日 13時

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