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真っ赤 ページ14

目が覚めた。心臓がドクドクと疾走している。

「………はぁ?」

自分でも驚くほど、低い声が出た。夢に嫉妬なんておかしな話だ。そもそも、つばさが恋人だと言った相手は。

「……なんで、龍儀さんなのよ…」

意味が分からなくて司咲は笑ってしまった。男同士の恋愛模様を見て楽しむ趣味は司咲にはないのに。

つばさの顔を見たら笑ってしまうかもしれない。そもそも、しつこいくらいに言い寄ってくるつばさが司咲以外の人を選ぶなんてありえない。

「…好き、か」

呟いて、胸がキュッと締まった。認めてしまえば、まるで沼のように、抜け出せない。なんでもないことが途端に愛おしくなる。

彼に向けられる好意が嬉しい。けれど、今はまだ応えない。素直になんてならない。

自分の身を守るために習得した技術。それで誰かを救えるのならそれでいいと思っていた。でも、つばさは救えなかった。晴明が来てくれなかったら、きっとつばさは命を落としていただろう。

強い無力感を感じる。だから、つばさを守れるように強くなりたい。胸を張って、つばさの隣に立てるように。

司咲はベッドを抜け出すと、ハッとした。

「え……?あれ?」

司咲が寝ていたのはベッドだ。じゃあ、つばさはどこで寝たのだろう。着替えてリビングに向かうと、つばさはキッチンに立っていた。

「おはよう、司咲ちゃん」

「…おはよう」

司咲はつばさの両腕を掴んだ。じっと見上げると、彼は戸惑ったように目を泳がせていた。

「…私、ベッドで寝てた」

「うん?」

「崎山さんは?どうして私にベッド譲ったのよ」

「女の子をソファで寝かせられないでしょ」

「千秋楽よ?もっと自分を大事にして」

「してるよ。心配してくれてありがとう」

「してないわよ!」

ギッと睨まれて、つばさは司咲の髪を撫でた。

「じゃあ、少しだけいい?」

何を、とは言わなかった。何を求めているのかも分からなかったけれど、司咲は小さく頷いた。

「ありがとう」

つばさは司咲の頬に触れると、唇にキスをした。驚いた司咲は、頬を真っ赤に染めた。閉じられた、端正な目がすぐ側にあって、司咲は動揺を隠すようにまつ毛の本数を数えた。すぐに離れたから、10本くらいしか数えられなかった。

「…キスしたいならそう言って」

俯いた司咲の頬が真っ赤に染まっていて、つばさは小さく微笑んだ。

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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年2月16日 13時

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