風呂上がり ページ12
風呂上がり、司咲はつばさの昔のパジャマを着ていた。昔の、とは言っても司咲にはぶかぶかで袖が余っていた。そんな姿にさえ胸がキュンとする。
「…崎山さん」
振り向いた彼女は見れば地面に座っていた。
「ソファ座ってて良かったのに」
「…座り慣れなくて。床の方が好き」
「そっか」
立ち上がろうとした司咲は裾を踏んで前のめりに倒れた。
「わ。大丈夫？ぶつけた…よね？」
司咲を抱き起こすと、彼女は羞恥のためか顔を真っ赤にしていた。
「だ、大丈夫…」
顔を覆う彼女の肩を抱えているつばさは小さく、クスリと笑った。
「あっ！裾…」
慌てたように裾を確認する彼女は破れていないことにホッと息を吐いた。
「良かった」
「…ごめんね。見るよ」
眠そうな顔でふわりと笑う司咲のズボンを膝まで捲る。右膝には絆創膏が貼ってあるが、特に傷は見当たらなかった。絆創膏を見ると、博喜に横抱きにされていた司咲を思い出す。裾を直して、つばさは司咲を抱きしめた。
「…さきやまさん？」
ふわふわとした声が聞こえた。
「寝ようか」
「……ん」
腕を離すと、のんびり立ち上がった彼女の手を取って、つばさは寝室へと向かった。ベッドに司咲を誘導すると、愛おしい瞳と目が合った。
「私、壁側でいいの？」
「……ん？」
まるで当然のように聞いてくる司咲につばさは固まった。一緒に寝ようとしているような言葉。
「私、壁側で、いいの？」
わざとゆっくり、区切って言う司咲につばさはプチパニックを起こした。
「え、いや、あの…え⁉︎…どういう意味？」
「別に深い意味なんてないわよ」
腕を組む彼女の目が今にも閉じてしまいそう。
「………と、とりあえず横になって」
司咲をベッドに横たえて、布団をかける。心臓がうるさいほどに動いていて、同時に混乱している。男と、まして好きだと言い寄られている男と一緒に寝ることがどういうことなのか分かっているのだろうか。
彼女を見ると、できる限り壁に寄っているから、本気で一緒に寝ようとしているのだと分かる。
「……寝ないの？」
「……あのさ」
床に膝をついて、司咲と目線を合わせたつばさは頬を摘んだ。
「俺何度も言ってるよね、君が好きだって」
「……うん？」
理解していないような彼女の頬から手を離すと、手を握り込んだ。
「司咲ちゃんと同じ布団には入れないよ」
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2022年2月16日 13時
