矛盾 ページ11
司咲はつばさのアパートのソファに座って、部屋を見回した。青を基調にした、統一された家具に囲まれてつばさは生活しているのか、と少しだけ微笑んだ。
「嬉しいな」
「…ん?」
隣に腰かけながら、つばさは司咲の手にお茶を渡した。ご飯を食べて、お腹が満たされたら少しだけ眠たくなってきた。
「…ありがとう」
お茶を飲む司咲をニコニコと見つめた。
「俺の部屋に来たがるなんて、普段は考えられないから」
「…別に、確認したいことがあっただけよ」
司咲は机にお茶を置くと、また部屋の中を見回した。
「…恥ずかしいな」
つばさの腕が司咲を抱きしめた。驚く彼女を腕の中に閉じ込めて、耳元で囁く。
「片付けできてないから、見られるのは恥ずかしい…」
愛おしいと想うから、つばさの腕に抱かれるのは嬉しいと思う。けれど、つばさの背中に腕を回しそうになるから困る。
「…確認したいことって?心配しなくても、俺は司咲ちゃん一筋だよ」
「そんなこと心配してないわよ」
司咲はつばさの肩を押して離れると、部屋の中を見回して微笑んだ。
「案外いいところに住んでいるのね」
「…そう?」
「うん、真四角で結界が張りやすい構造だわ」
司咲はそう言うと、またお茶を飲んだ。
「ねえ。お願い、聞いてくれる?」
つばさを見上げる司咲は世界中の誰よりもかわいかった。
「もちろん」
「…明日も来ていい?結界を張るわ」
「……はぁ」
ため息を吐くつばさに、司咲は首を傾げた。抱きしめると、司咲の頭を押さえるつばさは肩に頭を預けた。
「…ダメだった?」
司咲の問いにつばさは首を振った。
「司咲ちゃんが来てくれるのは嬉しいけど…」
髪を撫でる手が優しくて、司咲は目を細めた。何よりも嫌だった腕が今は何よりも嬉しい。それが恋をしているということなのかと、なんだか恥ずかしくなった。
「俺、何度も君に好きだって伝えていると思うんだけど」
「何度も聞いているわ」
「応える気がないなら、あんまり期待させないで」
「だから、結界だって…」
「俺に会いに来てよ。俺に会いたいって思って」
「……どうしろと?」
期待させるな、と言いながら会いに来い、だなんて矛盾している。わけが分からなくて司咲はつばさの肩を押した。離れた体をまた抱きしめられて、司咲は慌てた。
「好きっ!」
司咲は諦めて、その肩に頭を預けた。
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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年2月16日 13時