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知らない顔 ページ2

「ふ、普通ですよ。あの人なんて。ただ水族館行っただけです」

「ふぅん?心境の変化とかなかったの?」

「あ、あるわけないじゃないですか!何で私があの人のことを…」

くわっと牙を剥く司咲はふと祖母に出会ったことを思い出して、微笑んだ。

「……笑ってるよ、朱音」

「…これは何かあったね、瑞稀」

2人のそんな言葉なんて気にならないくらいに胸が温かくなった。

「…おばあちゃんに、会ったんです」

「ん?おばあちゃん?」

会話をしながらも彼女たちはちゃんと手を動かしている。

「水族館で出会った、おばあちゃんが使役している鬼に案内してもらって家に行ったんですけど。ずっと探してたって言われて、私嬉しくて」

「え、ちょ、待って?」

朱音に止められて、司咲は首を傾げた。

「司咲ちゃんのおばあちゃんも、視える人?ってか、今使役って言ったよね?」

混乱する2人に司咲は笑顔で頷いた。

「…それはつまり、遺伝的な?」

「…でも、鬼が言っていました。おばあちゃんの孫で鬼を目視したのは私だけだって」

「…よく分からないわ」

「でも、私だけじゃないんだって思ったらすごく、安心しました。視えないのが普通で、私は異常なんだって思っていたので」

つばさの衣装を繕うと、司咲は針をしまった。

「嬉しかったんです。私はおばあちゃんに大切にされていたって知ることができて。おばあちゃんは、お母さんが私を捨てたことは知らなかったみたいですけど、会えたことを喜んでくれたんです。……抱きしめてくれたんです」

ふと、大号泣しながら我儘を言ってしまったことを思い出した。次に会った時に謝ろうと司咲は思う。

不意にノック音が響いた。顔を出したのはつばさだった。一瞬目が合って、司咲は思わず目を逸らしてしまった。衣装のシワを伸ばしながら、つばさを見ると瑞稀と話をしていた。その横顔は真剣で、でも時折笑う。

そんなに真剣な顔を司咲は見たことがない。司咲の知らない顔だと、胸が一瞬痛くなった。その痛みの理由が分からなくて、司咲はつばさの衣装をひっくり返した。

つばさが悲しそうに司咲を見ていたなんて彼女は知らない。雰囲気が刺々しくて、声をかけることもできずにつばさは部屋を後にした。

妖気→←キス



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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年2月16日 13時

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