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電話 ページ46

泣き疲れて眠ってしまった司咲をつばさは助手席に座らせて、少しだけシートを倒す。つばさも運転席に乗り込んで、司咲の髪を撫でた。

少しだけ屈むと、つばさは司咲の頬にキスをした。起きていたら怒られていただろうか。

「……好きだなぁ」

前髪をさらりとあげると、額にキスを落として、シートベルトを締めた。好きな女の寝息だけが聞こえる車内。つばさはゆっくりと車を走らせた。好きな人と2人きりの空間で、何もしないなんてできなかった。柔らかい唇を奪わなかったことを自分で褒めた。

「…ごめんね」

小さく謝った。好きになったことを後悔はしていない。だけど、諦めてあげられないことを申し訳ないとは思う。つばさの人生、司咲だけがいればなんだってキラキラ輝くのだ。司咲以外の女には興味がない。

「好きだよ」

寝息だけしか聞こえない車内は静かで、好きな人と2人きりの空間が幸せだった。時々司咲の頬や髪に触れながら、つばさは帰ってきた。とりあえず、自宅に。1人にするなと言われたが、司咲はつばさと2人きりになるのは嫌がるだろう。寝ている司咲に手を出さない保証なんてどこにもないし、おそらくキスくらいはしてしまうと思う。現に、彼女の頬と額にキスをしてしまった。

小さく息を吐き出して、つばさはスマホを取り出すと、どこかへ電話をかけた。悔しいけど、彼女が1番心を許している人。でも、恋愛関係には絶対に発展しないような人。

電話は数コール後に繋がった。

『もしもし。つばさ?』

「もしもし。もっくん、今大丈夫?」



夕焼けがキレイな時間帯、司咲はつばさの腕に抱えられて基裕の家にやって来た。

「よぉ、つばさ。入ってく?」

「え、いいの?」

「いいよ。もう少し側にいなよ」

「ありがとう、もっくん」

つばさは司咲を腕に抱えたまま、基裕の家にお邪魔することにした。リビングに通されて、つばさは並べられた座布団の上に司咲を下ろした。膝の上に彼女の頭を乗せて、優しく髪を撫でた。

「…爆睡だな」

面白がる基裕の指が司咲の頬をつついた。

「……うん。本当に。全然起きない」

そう言って笑うつばさは司咲の髪についた飾りに触れた。

「…司咲ちゃんが俺と会うのにおめかししてくるなんて珍しいよね」

「……そうだな」

そう言って目を泳がせた基裕につばさは笑った。

「もっくんでしょ?」

「何のことだか」

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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2021年10月25日 23時

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