嫉妬 ページ17
ぐっと伸びをする司咲をつばさは見つめていた。ただただ好きだから、分かっていたけれど他の人の身体も見ていることに嫉妬する。仕事だから仕方ないけれど、嫌なものは嫌なのだ。
「司咲ちゃんはそーやって俺の心乱して楽しいの？」
「は？」
「俺が嫉妬するって分かってて言ってるんでしょ」
「なんの話よ」
「他の人のも見てるって言ってたでしょ」
まっすぐ見つめられる、その瞳に濃い嫉妬の色が見えた。
「すぐ嫉妬するのね」
「だって、好きなんだよ」
「さっきまで他の女の人と一緒だったくせに。ここに来るの、遅れたくせに。嘘つき。意味わからない」
ふいと背を向ける司咲の腕を掴んだ。つばさは睨みつける司咲の顔を覗き込んだ。
「……もしかして、嫉妬してる？」
「はぁ⁉︎なんで私があなたに嫉妬しなきゃいけないのよ！」
「違うの？俺が他の女の人と一緒にいたから、嫌だったんじゃないの？」
「違う！」
つばさは司咲を抱きしめると、優しく髪を撫でた。
「大丈夫だよ。俺は司咲ちゃん一筋だから。俺が恋してるのは司咲ちゃんだけだから」
「聞いてない！」
ぐいっと胸を押す司咲につばさは微笑みかけた。
「俺のこと、好き？」
「嫌いだわ」
「俺は大好きだよ。君だけが俺の特別。他の人に興味ないから。大丈夫だよ」
「勘違いで暴走しないでくれる？私が好きなのは…」
ふと、言葉を切った。博喜だと言えなくなってしまった自分に驚いた。フラれたばかりで、悲しかったはずなのに。苦しかったはずなのに。
突っぱねた腕から力が抜けた。抱きしめられながら、司咲は考えを巡らせた。博喜ではないのなら、その言葉の続きはない。自分の冷淡さにため息をつきそうになった。
「…好きな人は…いなくなったみたい」
「…そっか。そっか」
つばさの温もりが離れていった。するっと手のひらを重ねられた。繋がれた手から彼の熱が伝わってくる。
「嬉しい。俺、頑張るから。君に相応しい男になる」
輝かんばかりの笑顔を向けられて、司咲はふいと顔を逸らした。握られた手を握り返した。驚く彼の手に少しずつ力を入れていく。
だけど、どんなに力を入れても彼の手が離されることはなかった。嬉しそうな彼を司咲はキッと睨みつけた。
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年10月25日 23時
