心のケア ページ14
「つばさ、嫌われてるなぁ」
「それで、何か用事があるのでは?」
「うん。つばさ、少し調子悪いみたいだから、話聞いてあげてほしい」
「崎山さん?…そうは見えませんでしたけど…」
「体調面じゃなくて、心の調子がね。プロだから放っておいても本番までにはなんとかするだろうけど、司咲ちゃんが話しかけたらすぐ戻るから」
「司咲ちゃん、行っておいで。時間までまだ30分あるわ」
「たまにはつばさくんのために時間作ってあげて」
「……え」
「キャストの心のケアも大事な仕事よ」
「……はじめて聞きましたけど」
「今作ったからね」
「………分かりましたよ」
特大のため息をひとつ、司咲は渋々頷いた。
「ありがとう。…あ、ちょうど来た。司咲ちゃんよろしくね」
「……はい」
背を向けて歩いていく宏文の背中を見つめて、瑞稀が息をついた。
「今日もかっこいいわ!荒木さん!」
「……とりあえず、お願いされてしまいましたし、行ってきますね」
「うん、いってらっしゃい!」
「頑張ってね!」
先輩2人に背を向けて、司咲は周りを見回した。
「ええっと…」
長身ばかりで、帰ってきてすぐに誰かと話をしているのか、見つけられなかった。
周りを見回す司咲の肩に、不意に誰かの手が触れた。
「誰か探してるの?」
振り向くと、笑顔の奨悟が立っていた。
「あ、奨悟さん。崎山さんを…」
「ん?そこにいるよ?」
「えっ?」
前を向くいて、よく見ると目の前の背中がつばさだった。
「ありがとう」
「なんか、かわいそうになってきた」
「え?」
「つばささん、あんなにちらちら見てるのに、見つけてもらえないなんて…」
「だって…」
「ま、なんでもいいけどね。ほら、嫉妬される前に行って」
とん、と背中を押されて司咲は顔だけ奨悟を振り返った。やはり今日もかっこいいな、と瑞稀と同じことを考えながら歩いていると、誰かにぶつかった。
「わ、ごめんなさ…」
前を向いて謝る司咲の背中に腕が回った。ぎゅっと引き寄せられて、その匂いに誰か悟った。
「…崎山さん」
「少しだけ」
つばさは彼女の髪を撫でて、優しく包み込んだ。
「司咲ちゃんがキョロキョロしてたから、もしかしたら俺を探してるのかなって思った。俺だったらいいなって」
「うん」
「誰を探していたの?」
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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2021年10月25日 23時