三角関係 ページ5
集まったのは、つばさ、司咲、来夢、涼星、博喜だった。茜色だった空はもうとっくに闇へと姿を変えている。
つばさといる時は嫌そうだったのに、博喜を見た途端に司咲の顔が輝くような笑顔に変わっていった。
不機嫌になっていくのが自分でも分かる。つばさには向けられることのない瞳を向けられているのが心底羨ましい。
博喜も優しいから、つばさの方をちらちらと見ながら司咲の言葉をちゃんと聞いている。申し訳なさそうな彼に笑顔を向けるが、本当は今すぐにでもその細い腕を引きたい。つばさの方を向いてほしい。
長野出身だと言う来夢のおすすめのお店にやってきた。個室に案内されて、司咲はつばさに懇願されて仕方なく、博喜を横につばさの隣に座った。博喜とつばさに挟まれた司咲を見て、来夢と涼星は顔を見合わせた。
「地獄絵図…？」
「…ですね」
「何言ってるの？」
博喜だけが分かっていなくて首を傾げている。そこには三角関係が存在していて、2人はスマホのカメラを向けた。
「ちょっと、なんで今撮ったの！」
怒りながらも、司咲は博喜の隣に座っているだけで口元が緩むのを抑えられていなかった。
注文を済ませると、司咲の瞳は時折博喜を見上げて嬉しそうに細められた。涼星や来夢も見るが、つばさには向かない。それがやはり気に食わない。
振り向かせたいのに、どうしてもうまくいかない。嫌われるばっかりで辛い。
「司咲ちゃん」
名前を呼ぶと振り向く彼女の瞳にはなんの感情も宿っていなかった。
「……何」
「博喜とばかり話さないで。俺のことも見て」
手を優しく握ろうとするが、避けられてしまった。それがまたつばさの心を傷つける。
泣きそうになりながら、まっすぐ見つめていると、ため息を吐かれた。
「もう諦めて。お願い」
来夢と涼星と博喜は顔を見合わせてそっと個室の端に集まって2人を見守っていた。ただの野次馬だが。
「嫌だよ」
つばさはふるふると頭を左右に振った。
「彼氏でもできないと諦められない。絶対嫌だから！フラれたら胸貸してあげる」
「フラれる前提で言わないで！」
キッと睨みつけるが、彼は弱々しく笑うだけだった。その瞳にたくさんの愛が詰め込まれていて、司咲だけを見つめていた。
ずるずるときたけれど、そろそろハッキリさせないといけないかもしれない。博喜のためにも、司咲のためにも。
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年8月5日 22時
