ダブルしょうご ページ25
「きゃーっ！」
場所はさいたまスーパーアリーナ。歌合の場当たり稽古があり、司咲たちも参加している。少しだけ早く入ったが、急に抱きつかれて悲鳴を上げてしまった。
出演者は全員集まっていて、司咲の方を振り返っては笑っている。
「そんなに驚かないでよ」
「だって、びっくりするじゃないですか」
向かい合って、司咲と瑞稀と朱音はお辞儀をして新年の挨拶をして笑った。
「司咲ちゃんって、大きいよね」
「何センチあるの？」
「ええっと…」
頭に手を置いて、首を傾げた。
「どのくらいですかね？」
首を傾げる彼女の隣に誰かが並んだ。
「僕とそう変わらないから、169センチくらいじゃないかな？」
隣を見ると、升吾が笑顔で立っていた。
「確かに。僕たち同じようなサイズだよね」
「わっ」
升吾と奨悟に挟まれて、司咲は驚いて一歩下がってしまった。
「あけましておめでとうございます」
挨拶を交わす姿を見て、司咲は顔を覆った。
「あれ？」
「新年早々奨悟さんはきつい…。心臓が…」
あはは、と笑っている彼らに新年の挨拶をしてから司咲は差し出された奨悟の手を握った。
「よし、行こう」
「えっ？」
もう片方の手を升吾に握られて、連行された。その後ろ姿を見送った瑞稀と朱音は顔を見合わせて笑った。
「ちょ、どこへ？」
彼らに誘導されながら、司咲は2人に声をかけた。
「着いてからのお楽しみ」
ちゃんと説明してはくれないみたいで、司咲は諦めて2人の手をしっかりと握った。
「それじゃ」
「えっ」
とある部屋に押し込まれて、2人は去って行った。最初から最後まで何が何だか分からずに、混乱していた。
ピコン、とスマホが鳴り見ると升吾からで、『頑張って』というスタンプが送られてきた。
「あれ、司咲ちゃん？」
振り返ると、そこには博喜がいた。
「博喜さん…」
司咲は彼にぺこりと頭を下げた。
「あけましておめでとう。今年もよろしく」
そう言って笑うと、彼も同じ言葉を口にして微笑んだ。
「どうしたの？こんなところで」
「…私も何が何だか。ダブルしょうごさんにこの部屋に押し込まれて混乱中」
なんとなくだけど、升吾の『頑張れ』の意味がわかった気がするが、何故彼が知っているのだろうかと、また混乱した。
「あはは。なんだろうね」
博喜が笑っているから、まあ良いかと司咲も笑った。
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年8月5日 22時
