もしも、運命なら…3 (ページ19)

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痛みページ19

張られた頬が、彼女の言葉が突き刺さった心が、痛かった。司咲に恋するつばさは嫌いだと言うから。諦める以外の選択肢を残してくれなかった。

帰って行く司咲を繋ぎ止める言葉が見つからなかった。彼女を追いかけた手は空を掴む。

まるで子どものようだと思った。頬を伝う涙は止まらなくて、関係を切られたくないのに司咲への恋を諦めることもできない。

いつか、笑って友だちだと言える日が来るだろうか。

ソファに座り込んだままのつばさは感情が揺れるままに泣いた。司咲を愛したことも、キスをしたことも後悔なんてしていない。その結果叩かれた頬は熱を持ち、赤く腫れてきていた。冷やさないといけないのは分かっているのに、その赤みを取りたくない。彼女の痕跡を残しておきたかった。

じりじりと痛む頬を押さえた。つばさは俳優だからあざのある顔では正月明けの仕事ができない。司咲の手形がついた頬を残すことはできなかった。

立ち上がろうとして、さっきまで座っていた彼女のわずかなぬくもりを感じて、動けなくなった。頬を叩かれた痛みよりも、フラれた胸の痛みの方がずっとずっと、痛かった。

数日前に贈ろうとしたバレッタのように、この恋も捨てられない。何度出会い直しても、つばさは司咲に恋をしただろう。もう、司咲以外の女を愛することができない。愛したことを過去になんてしたくない。ずっと愛していたい。

つばさ以外の誰かと共にいる彼女の幸せなんて、絶対に願えない。司咲の恋を応援するなんて、論外なのだ。そんなことができたら、そもそもこんなに彼女を追いかけていない。

彼女が望む関係にはなれそうもない。友だちになんて絶対、なれない。それでも、友だちとして、密かに想い続けることは許されるのだろうか。

つばさはやっとの思いで立ち上がると、顔を洗って頬に保冷剤を当てた。スマホを出すと、通知が1件きていた。差出人の名前を見て、胸が苦しくなった。震える指でタップすると、せっかく止まった涙がまた溢れた。

『叩いてごめんなさい。ちゃんと冷やしてね』

その優しさが辛かった。嬉しいはずなのに、今だけは痛くて痛くて。やはり彼女が好きだと心が叫んでいる。

つばさは、そのメッセージには何も返せなくてスマホを額に当てて泣き崩れた。