恋 ページ49
通話の切れたスマホを片手に、基裕は苦笑いを零した。休演日だが、集まれるメンバーで集まってご飯でも行こうかとしていたところだった。
「もっくんさん？」
「つばさは脈なしかなぁ…」
「つばささんだけめっちゃ嫌われてましたもんね」
「多分だけど…。司咲、博喜のこと好きになっちゃってるかも」
「えぇ⁉」
驚くのもすごくよく分かる、と基裕は頷いた。
時刻は午後7時。とりあえずご飯でも行こうと歩き出した。
「恋に時間も歳も関係ないからね〜。あの子の場合、まだ自覚はしていないみたいだけど…」
息を吐き出して、基裕はうーん、と少しだけ唸った。司咲の背中を押してあげるべきか、つばさの恋を応援するべきか。
「司咲が幸せになれるなら、つばさでも博喜でもどっちでもいいんだよ、俺は。重要なのは司咲が幸せになれるかどうかだから」
「司咲ちゃん、愛されてる」
そう言って、来夢は笑った。
「でも、博喜さんかぁ…」
升吾がひとりごとのように呟いた。
「長身が好き？」
「まあ、司咲が結構背高いからね。でも、多分そうじゃない。身長でも顔でもないんだと思う。ただ、なんとなく惹かれちゃっているんじゃないかな」
基裕の言葉に涼星は納得したように手を打った。
「素敵っすね！」
まだ成人したばかりで恋愛経験の浅い升吾と来夢にはあまりピンときていないみたいだった。
「涼星、司咲と同い年の君だからこそ相談しやすいこともあると思うから、いろいろ聞いてやって」
「お任せください！」
ピシッと敬礼をする彼に基裕は小さく笑った。
「不安だ…」
「なんでっすか！」
「司咲が恋をするのは何年振りだろう…」
兵庫の空を見上げてそんなことを呟いた。できればあまり傷ついてほしくない。相手が博喜ならばそんなに心配することもないと思うが、基裕は切に願う。傷ついている司咲を誰よりも近くで見てきたから、もう傷つかないでほしいと思ってしまう。それが基裕の兄心というものなのだろう。
「恋しろよ、若者たち…」
そう言って全員の肩を組んだ。
「もっくんさん、おじさんみたい」
「…くそガキ」
ギュッと脇腹をつねられて、涼星はその場に沈んだ。そんな彼を来夢と升吾が傍観しながら笑っていた。
「おら、行くぞ！今日は奢ってやるから！」
なんて少し上機嫌な基裕の背を2人は顔を見合わせてから追いかけた。
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年6月29日 15時
