友だち ページ37
「俺がお世話になってるところだけど、大道具、小道具やヘアメイクや衣装を主に請け負ってるところをかき集めてきた。ま、参考程度に考えてみて」
「ありがとう」
「あと、本気で舞台の仕事したいなら、求人サイトなんて見ても意味ないから」
「…え」
「片っ端から電話！これに限る」
基裕はそう言って司咲の瞳を柔らかい笑顔で見つめた。
「大丈夫。司咲ならできるよ」
「……いつか、基くんとも仕事してみたい」
「期待してる」
ぐしゃっと髪を撫でられて、司咲はその顔に笑顔の花を咲かせた。
「基くん、来夢くんたちに会いたいな。ちゃんとお礼したい。いつか会えないかな」
「会えるよ。友だちなんだろ」
「…うん」
彼らと出会えて、友だちになってくれて、司咲は心の底から嬉しかったのだ。司咲は彼らの言葉に、瞳に救われた。嘘も偽りもなく、司咲を尊敬するような瞳。大半が司咲よりも年下なのに、誰も特異な彼女を蔑んだりしない。それがどれ程嬉しかったか、きっと彼らには分からない。
感謝しているのだ。ありのままの司咲を受け入れてくれた彼らに。だから、直接会ってお礼をしたいと思った。何をすればいいのかは分からないけれど。
「でも、あいつらはお礼なんていらないって言うと思うけどな。普通にご飯食べたり、一緒に出かけたりすればいい」
「そういうもの？」
「うん。そういうものだよ。友だちって」
「……そっか」
今まで、基裕以外の人に受け入れられたのははじめてで、司咲はどうすればいいのか分からなかった。当然、友だちなんてものもはじめてできた訳だから、どう関わっていけばいいのか正直分からなかったのだ。
俯いて瞳を揺らす司咲を基裕はふんわりと抱きしめた。分からないなら知ればいい。きっとぶつかることもあると思うけれど、絶対に司咲を一方的に突き放すことはない。彼らは司咲のことをちゃんと認めているから。だから不安になる必要なんてないのだ。
「…つばさは？」
「あの人は嫌い」
即答で返ってきて、つばさには悪いけれど基裕は少し笑ってしまった。基裕が知っている中で、司咲がこんなにコロコロと表情を変えるところを見たことがない。今はまだ負の感情ばかりだが、いつか彼にも正の感情を見せるようになるのだろうか、と少しばかり楽しみだったりする。
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年6月29日 15時
