マブダチ ページ30
「ツンデレだからさ。俺、司咲があんなにはっきり『大っ嫌い』って言うのはじめて見た。普段は嫌いでも本人の前で言うことはないのに。それだけつばさに心許してるってことだと俺は思うけど」
「それだと嬉しいかな…」
みんなと戯れている司咲を優しい瞳で見つめるつばさに基裕は親愛よりも深いものを感じた。
「つばさ、司咲のこと好きでしょ。恋愛的な意味で」
「えっ⁉」
小声でそう言う基裕につばさは声をあげて驚いてしまった。
「驚きすぎ。顔に出てるから」
視線の先で司咲が博喜に笑いかけていた。
「何がそんなに嫌なの？」
博喜の視線がつばさを示す。司咲は苦虫を数十匹噛み潰したような顔をした。
「見かけによらず強引だし、人の心にズカズカ入ってきて掻き乱していくから嫌い」
その言葉に博喜も、他の人もクスクスと笑う。
「なんで笑うの」
「かわいいなぁって」
「基くんといい、あなたたちといい、俳優って変な人ばっかりなのね」
「それは心外だなぁ…」
口元に手を当てて笑う司咲を見て、基裕はつばさの背中をバシッと叩く。
「痛っ」
「相手がつばさなら安心かな、俺は」
基裕はにやりと笑った。
「あの子の傷も痛みも全部受け止める覚悟があるなら協力する」
決して浅くはない傷を受け止める覚悟があるのかと。司咲を傷つけるならば許しはしないと、その瞳が物語る。つばさに迷いなんてあるはずがない。彼女のことを知ってからずっと。
「たとえ恨まれても、俺は司咲ちゃんを助け出したい。そう思ってるよ」
「……合格。ま、道のりは長いと思うけどね」
くいっと裾を引かれて、基裕は振り返る。
「基くん、その人とばっかり喋ってる」
「なーに、妬いてるの？司咲もつばさと話したい？」
「違うっ‼」
即座に否定して、司咲はぷくっと頬を膨らました。
「だって基くんいないと今日の感想言えない」
「じゃあ、聞こうかな」
「でも、その前にお腹すいた」
「ははっ。ご飯食べに行こうか。つばさもどう？」
「えっ。嫌だ」
つばさよりも先に司咲が嫌そうに声をあげた。
「てか、基くんこの人と仲良いの？」
「うん。マブダチだからね」
「……古い」
「これがジェネレーションギャップか…」
ダンっと床を叩いて悔しそうなフリをする基裕を見て、司咲は笑った。
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年6月29日 15時
