しょうご ページ29
霊に追われたり、霊に襲われたり、なんて司咲にとってはよくある事なのだ。
「私たちのような人間にこの世界は生き辛い。少し霊感のある人はざらにいるはずのに、鮮明に見えているとまるでゴミでも見るような目で見てくる。人は私たちを疎み、蔑み、忌み嫌う。だから基くんみたいな人は相当の変わり者」
「おい。誰が変わり者だ」
基裕の言葉に司咲は隣の長身を見上げた。
「変わり者」
ふんわりと笑った。嬉しそうだからまあいっか、と基裕は司咲の髪を撫でた。
「でも、基くんがいたから私は私でいられた。必要最低限の物は与えられたけど、みんな私には何も教えてくれなかった。だから基くんが私の兄のようで、先生のようだった。私には家族も友だちもいないし、それで良いって今でも思う。基くんだけがいてくれれば私は生きていけるから」
そう言いながら、悲しそうな顔をする司咲はきっと嘘はつけないのだろう。口ではそれで良いと言うのに、彼女の表情は『寂しい』と言っているように感じた。
「そんなことないよ。もっくんさんが兄なら、俺たちが友だちになるよ」
来夢の言葉に司咲は視線を彷徨わせた。
「……でも」
「大丈夫だよ。忌み嫌ったりしないし、司咲ちゃんのこと純粋にすごいなって思ってる」
その言葉に嘘偽りがないのは司咲にも分かった。
「友だちになろうよ」
泣きそうな顔で頷いた司咲は升吾の手を取った。
「ありがとう」
涙をなんとか堪えて、司咲は微笑んだ。嬉しそうで、とても幸せそうな笑顔だった。
「升吾さんって呼んでもいい？」
「え？うん。なんなら呼び捨てでもいいけど」
「それは無理。しょうごって名前は特別なの。呼び捨てになんてできない。その名前をつけたご両親はとても素晴らしいと思う！」
目をきらきらと輝かせて力強く言う司咲を基裕が回収する。
「はい、落ち着けバカ」
「あ、酷い！友だち作れって言ったの基くんなのに」
その言葉は軽くスルーして基裕は升吾に謝る。
「悪いな。司咲、阪本奨悟のファンだからしょうごって名前大好きなんだよ」
「でも、嬉しい。ありがとう、司咲ちゃん」
司咲は基裕から解放されて、みんなと握手した。つばさ以外。華麗にスルーされて、つばさはガクッと肩を落とした。
「俺、相当嫌われてる…」
「ドンマイ、つばさ」
ぐっと親指を立てる基裕をつばさは軽く睨みつけた。
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年6月29日 15時
