霊力 ページ28
「大丈夫だよ。みんな受け止めてくれる」
「なんで言い切れるの」
「俺が大丈夫って言ってるんだから絶対大丈夫なんだよ。信じろ」
「暴論…」
そう言いながら、司咲はやっと笑うことができた。
「あ、全員敬語禁止な。こいつ25だし」
「俺より歳上ですよ？」
来夢の発言を基裕は首を振って却下した。
「できればこの子の友だちになってくれない？歳の近いところで」
「そういうことでしたら！」
そこの話がひと段落したところで、司咲は口を開いた。
「…私には、人ならざる者…。幽霊とか妖とか鬼とか見えちゃうの。よく見ないと人との区別がつかないくらい鮮明に」
「へぇ！すごい！」
升吾が目をキラッと輝かせた。
「怖い？」
涼星の問いに司咲は小さく頷いた。
「無害だろうと、悪意のあるものだろうとやっぱり怖い…。手がね、震えるの。ああいうのは目を合わせたらいけない。何をされるか分からないから。最悪体を乗っ取られる」
「怖っ」
「そういう時は神社に行けば安全なんだ。神社には御祭神が普通の人には感知できない結界を四六時中張っているから。結界の中に逃げ込めば安全。そこで私は幽霊が閻魔様の部下に連れていかれるまで待つんだ」
「大変なんだ…」
升吾にそう言われて小さく頷いておいた。この力は今まで司咲を幸せにしてくれたことはない。
「みんな霊感って言うけど、私は霊力って呼んでる」
「霊力…？」
博喜の言葉に合わせてみんなが首を傾げる。
その昔、平安の世。司咲のように人ならざる者を見る者は少なくなかった。人に生まれつき備わる力。それが霊力。それを駆使して平安の人は祈祷をしたり妖退治をしていた。その代表的なのが安倍晴明だろう。
そう説明すると、納得したような顔をする。
「京都の晴明神社。あそこの御祭神に陰陽術を教わった。あまり使わないから簡単なものしかできないけど、さっきみたいなどうしようもない時は陰陽術を使うの。体力ごっそり持っていかれるけど」
陰陽術を習得したからといって、司咲を取り巻く環境は変わらなかった。人は視えるだけで司咲を忌み嫌う。
「昔、晴明様に言われた。見えすぎるのは良くないって。でも、力の封印はできない。だから、あまり目を合わせるなって言われていたの。でもね、よく見ないと人か霊か区別できない私には少し難しくて…」
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年6月29日 15時
